DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

名人戦も4-0だった

名人戦叡王戦も4連勝で挑戦者が奪取、という結果に終わった。高見叡王も佐藤名人もカド番で踏ん張り切れずに押し切られてしまった。
番勝負でもう1つも負けられない状態を「カド番」と言う。また大相撲の大関が先場所負け越してそこで勝ち越さないと大関から陥落してしまう場所(状態)も「カド番」と言う

…このカド番という言葉、自分は相撲が発祥だと思っていた(そう思っている人は少なくないと思う)が、『相撲大事典』によると

かどばん【角番】
大関は、二場所連続して負け越したときは降下する」と『寄附行為施行細則 附属規定』の『番附編成要領』に定められており、一場所を負け越して、次に迎えた場所を通称で「角番」という。角番となった大関を俗に「角番大関」という。囲碁や将棋の七番勝負で負けが決まる一局を「角番」ということに由来する。

実際は将棋(や囲碁)の用語が発祥であるという。…厳密に倣うのなら(大関が負け越しで迎えた場所で)7敗目を喫した状態=あと1番負けたら陥落が確定する状態を「カド番」と言うべきなのかも知れないが…
確かに相撲の方が歴史があると言っても(名人戦7番勝負が初めて行われたのは1940年)、番付の制度までが今と同じだったとは限らないので(※1)どちらが由来であっても不思議ではない話ではある。もしこれが某国の競技だったとしたらそういった歴史的事実を無視して「カド番は我々が発祥の言葉だ!」などと羞恥心の欠片もない事を宣うのだろうな、とか思ったがそれは忘れよう(笑)。

竜王または名人を失冠した棋士は1年間(次の番勝負の決着日まで)「前竜王」「前名人」という肩書を名乗る事ができるが、記憶違いでなければ1998年にそれを名乗る資格があった谷川浩司九段が辞退して以降この肩書を名乗った棋士がいない。一応序列としては「タイトル保持者(※2)の下」「九段の上」という扱いだが、この時点で谷川九段は「十七世名人」の資格を得ているので「名乗る意味がない」と思ったのか、あるいは「未練がましい」という谷川九段らしい(?)美意識なのか、理由は本人のみぞ知ると言ったところだが、後進の棋士たちもその顰に倣う(…用法合ってるかなぁ?)ようになったので、谷川九段は盤上だけでなく盤外でも範とされる凄い人だと思う(※3)。こういう人が日本のトップにいたら今の日本(特に政財界)はもっといい国になりそう(施策が云々というより「あの人のようになりたい」という手本になり得る)なんだけど…

今期の順位戦の組み合わせが5月10日に発表された。総当たりのB1以上はともかく、そうでないB2以下は誰と当たるかという運もある。…もっとも自分が一番気になるのは森下九段、次いで増田康宏六段、正直他はどうでも良かったり(笑)。

森下九段は昨年と比べると「当たりが弱くなった」ようにも見える。何と言っても藤井聡太七段との対戦がないし、佐々木勇気七段との対戦もない(※4)。増田康宏六段との師弟戦は規定で「絶対にない(当たるのは総当たりのB1以上だけ)」。前期で9勝1敗の頭ハネを喰らった船江恒平六段は強敵だが、それ以外は「これはアカン」的な相手がいない。それこそ前期の杉本八段に続く「B2復帰」もあるんじゃないか、とか期待してしまう(笑)。
増田康宏六段は順位が悪いので9勝1敗ではほぼ鉄板で昇級できないだろうが、対戦相手は森下九段以上に(それこそC1メンバー中最も?)恵まれているようにも見える。キツイ言い方をするなら、この相手で昇級争いに絡めないようだと「お先真っ暗」になってしまうかも知れない。

参考までに(?)前期1期抜けを逃した藤井聡太七段、こちらも佐々木勇気七段との対戦がない(前期もなかった)。「元祖藤井キラー」との対局がない事を喜んでいるファンがかなりいそうだ(笑)。今期は船江恒平六段戦が「天王山」となりそうで、もし下の方に(佐々木勇気七段か増田康宏六段あたりが)全勝がいる場合、ここの敗者は2期連続の頭ハネを喰らう可能性もありそうだ。


※1…年6場所制度となった1958年(角界でカド番という言葉が使われるようになったのもこの頃らしい)に「大関は3場所連続負け越しで陥落」という規定に改められた。それ以前は「2場所連続負け越しで陥落」、またその後1969年には現行の「2場所連続負け越しで陥落→翌場所関脇で10勝なら復帰」と改められた。

※2…永世称号有資格者もここに含まれるっぽい(連盟HPの棋士データベースには永世称号有資格者も「タイトル保持者」として扱われている)。

※3…関西の棋士がよく行う所作に「着手前に取る駒を置くスペースを作る」というのがある。
例えば持駒が「角桂」、次に「銀を取る着手」を指す時に、着手前に角と桂の間に「銀を置くスペースを開けてから」盤上の銀を取ってそのスペースに置き(通常は「取りあえず駒台の広く空いている所」に置く事が多い)、それから自分の駒を動かす、という手順の所作だが、これも谷川九段がやっているのを後輩が真似た、と言われている。

※4…B2とC1は同じ相手と2年連続で当たる可能性はあった(3年連続は絶対ない)。反対に2年連続で当たらなかった相手とは必ず当たる(ただし該当する相手が11人以上いて全員と当たれなかった場合その相手とは「その次の年に最優先で当たる」)。そのため、佐々木勇気七段と森下卓九段・増田康宏六段・藤井聡太七段は両方とも昇級しなかった場合(あるいは両方昇級した場合)は来期は必ず当たる事になる。