…このカド番という言葉、自分は相撲が発祥だと思っていた(そう思っている人は少なくないと思う)が、『相撲大事典』によると
かどばん【角番】
確かに相撲の方が歴史があると言っても(名人戦7番勝負が初めて行われたのは1940年)、番付の制度までが今と同じだったとは限らないので(※1)どちらが由来であっても不思議ではない話ではある。もしこれが某国の競技だったとしたらそういった歴史的事実を無視して「カド番は我々が発祥の言葉だ!」などと羞恥心の欠片もない事を宣うのだろうな、とか思ったがそれは忘れよう(笑)。
竜王または名人を失冠した棋士は1年間(次の番勝負の決着日まで)「前竜王」「前名人」という肩書を名乗る事ができるが、記憶違いでなければ1998年にそれを名乗る資格があった谷川浩司九段が辞退して以降この肩書を名乗った棋士がいない。一応序列としては「タイトル保持者(※2)の下」「九段の上」という扱いだが、この時点で谷川九段は「十七世名人」の資格を得ているので「名乗る意味がない」と思ったのか、あるいは「未練がましい」という谷川九段らしい(?)美意識なのか、理由は本人のみぞ知ると言ったところだが、後進の棋士たちもその顰に倣う(…用法合ってるかなぁ?)ようになったので、谷川九段は盤上だけでなく盤外でも範とされる凄い人だと思う(※3)。こういう人が日本のトップにいたら今の日本(特に政財界)はもっといい国になりそう(施策が云々というより「あの人のようになりたい」という手本になり得る)なんだけど…
森下九段は昨年と比べると「当たりが弱くなった」ようにも見える。何と言っても藤井聡太七段との対戦がないし、佐々木勇気七段との対戦もない(※4)。増田康宏六段との師弟戦は規定で「絶対にない(当たるのは総当たりのB1以上だけ)」。前期で9勝1敗の頭ハネを喰らった船江恒平六段は強敵だが、それ以外は「これはアカン」的な相手がいない。それこそ前期の杉本八段に続く「B2復帰」もあるんじゃないか、とか期待してしまう(笑)。
増田康宏六段は順位が悪いので9勝1敗ではほぼ鉄板で昇級できないだろうが、対戦相手は森下九段以上に(それこそC1メンバー中最も?)恵まれているようにも見える。キツイ言い方をするなら、この相手で昇級争いに絡めないようだと「お先真っ暗」になってしまうかも知れない。
参考までに(?)前期1期抜けを逃した藤井聡太七段、こちらも佐々木勇気七段との対戦がない(前期もなかった)。「元祖藤井キラー」との対局がない事を喜んでいるファンがかなりいそうだ(笑)。今期は船江恒平六段戦が「天王山」となりそうで、もし下の方に(佐々木勇気七段か増田康宏六段あたりが)全勝がいる場合、ここの敗者は2期連続の頭ハネを喰らう可能性もありそうだ。
※1…年6場所制度となった1958年(角界でカド番という言葉が使われるようになったのもこの頃らしい)に「大関は3場所連続負け越しで陥落」という規定に改められた。それ以前は「2場所連続負け越しで陥落」、またその後1969年には現行の「2場所連続負け越しで陥落→翌場所関脇で10勝なら復帰」と改められた。
※3…関西の棋士がよく行う所作に「着手前に取る駒を置くスペースを作る」というのがある。
例えば持駒が「角桂」、次に「銀を取る着手」を指す時に、着手前に角と桂の間に「銀を置くスペースを開けてから」盤上の銀を取ってそのスペースに置き(通常は「取りあえず駒台の広く空いている所」に置く事が多い)、それから自分の駒を動かす、という手順の所作だが、これも谷川九段がやっているのを後輩が真似た、と言われている。