先日届いた香龍会グループメールの内容に少なからず驚かされた。
…ここで詳細を書く事は控えておく。こう見えても(どう見えているのかは知らんが)「情報」の扱いには(少なくとも「情報(秘密)は漏らすもの」と心得ているようなアホとかより数百倍は厳格な)ポリシーを持っているつもりなので。…書いても問題なさそうな範囲で言うなら「香龍会の廃止」や「関係者(常連参加者や東海地区の詰将棋作家とか)の訃報」とかいう話ではない。
…というか31日付で香龍会ブログに書かれていますね。
以前も書いた(と思う)が、「情報の扱い」は気を使う。例えば開発中のゲームの情報にしても中には「その存在すら世間にはまだ知られていない」事も少なくないし、また既報があるゲームにしても未完成品に「後日配信予定のDLC」が含まれている事もあるので、そのゲームがリリースされた後でも機密漏洩してしまう(何気に話した事が実はそれだった、という)可能性すら潜んでいる。
こういったごく限定的な話ならまだいい(それでも億単位の損害賠償に発展する可能性はある)が、国や組織を揺るがすような機密に関しては「握った方」も「握られた方」も気が気でなくなるのは歴史が証明している。「握った方」はそれが原因でいつ消されるか気が気でなくなるし、「握られた方」もいつ裏切られるか気が気でなくなる。徳川家康が「江戸城の最高機密」に関わった人物を完成後に一人残らず処刑した【*1】というのもそういう心理の帰結。
また「その機密を元手に恩賞に与ろう」と考える小者は掃いて捨てるレベルで存在し、例えば三国志の冒頭の「黄巾の乱」も当初は内通者を得て内外両面から宦官を討つ計画だったものが内通者への伝令が宦官側に寝返った事で計画が露見・破綻して「統率の取れない民衆暴動」になっている【*2】。…「企業機密を手土産に違う職場に移る」なんてのも同類だろうし、今だったら「その機密を元手に閲覧数を稼ごう」と考える小者以下の物体が掃いて捨てるレベルで存在するのだろう。
三国志演義では曹操が「曹操暗殺計画を密告してきた人を処刑する」というシーンがある。…とだけ言っても作中に「曹操暗殺計画」は何度も出てくるので詳しく書くと「馬騰が処刑される(命からがら逃げ遂せた馬岱からその話を聞いた馬超が復讐の兵を興した)」場面【*3】。密告してきたのは首謀者黄奎(彼も演義だけの登場人物)の使用人で、黄奎を亡き者にして彼の妾を妻に娶るための計画(密告)であったが、それを知った曹操に「私欲のために主人を売り渡すような奴は生きていても何の役にも立つまい」と言われて黄奎や馬騰と共に処刑されている。また後年の漢中攻略戦では(「機密」とはあまり関係のない話であるが)攻略の決め手を欠いていた曹操は張魯配下の楊松(三国志の中で有数の「強欲」で知られる人物。ちなみにこちらも正史にその名はない)に賄賂を贈って内通させるが、漢中平定後にその楊松が同じ事を言われて処刑されている(張魯をはじめとした他の降伏者は赦されている)。
…事象だけ見ると「曹操は恩を仇で返す奴」という風に読めなくもない【*4】が、曹操の指摘もある意味非常に理に適っているとも言え、機密を私欲に使おうとする輩にはそれ相応の報いがあってもいいと思う。もっともいざ自分が「大金で売れる機密」を手にした時にも同じ事を言えるのかどうかは正直自信がないけど(笑)。
*1:「そんなのは風聞・でっち上げだ」と主張する人も(主に家康擁護者に)いるが、同じような事をやった(可能性が高い)為政者は彼以外にも散見されるので家康がそういう事をやっていても全然不思議ではない。ちなみに「ゴルゴ13」も「依頼を遂行する上でどうしても機密(自分の技術)を明かさないといけない依頼者」に対し「依頼が完了したらお前の命をもらう」という条件を突き付けている(それでもその依頼者はその条件で依頼している。結末は「依頼の過程で敵側に殺されている」)。
*2:その「裏切者」の結末はどこにも書かれていないが、十常侍(政治を牛耳っていた宦官のトップ集団。「十」という漢字が使われているが正史では「12人」)が世間の想像通りの人間だったとしたら「恩賞を受けた後に抹殺された」可能性が高い。
*3:以前も書いたが「馬騰が処刑されるくだりは正史と演義で正反対」なので当然ながら正史にこのエピソードはない。
*4:もっともそんな事を言ったら「機密情報ごと社員の引き抜きを画策する企業(や担当者)」の方が「恩を仇で返す」可能性は高いと思う(実際その手の引き抜きは「欲しいのは情報だけで人の方は用済み」という事が多いと言うし)。