懸念材料(?)の一つであった「対局場所」。昇段の絡む杉本昌隆八段と近藤誠也五段が将棋会館(千駄ヶ谷)、船江恒平六段(と藤井聡太七段)は関西将棋会館。…全部ではないが「選べる」配置になった(今もそうなのかは分からないが、対局が終わると対局室のあるフロアにある「ボード」の「勝った棋士のネームプレート」を少し上にずらす=一目で結果が分かってしまう)。
順位戦は持ち時間6時間、B2以下(チェスクロック計時)だと双方使い切ると23時を越えるが、この日の対局の中には「昼食休憩前(11時23分)に終わった」将棋もあった。…下手をすれば朝日杯(持ち時間40分)よりも早い決着である。
昇級争いが繰り広げられる一方で20時51分に降級点争いが決着。その結果一気に5人がC2に降級となった。来期のC1は今年より3人少なくなる(上か下に行く人=7人、上か下から来る人=4人)。…あまり影響はなさそう(来期も降級点は7人)だけど。
21時09分、髙崎一生六段投了、脱落。昇級の可能性は4人に。
22時24分、杉本昌隆八段勝利、昇級を決める。それも33年ぶりとなる「B2から落ちた棋士の復活昇級」。…本来だったら森下九段がその記録を達成するはずだったんだけどなぁ(笑)。
杉本昌隆八段が真っ先に決着したので以前書いた「選ぶ」という状況はこの時点で消滅。良かった…(?)
22時33分、船江恒平六段が勝利、この時点で藤井聡太七段(この時点でまだ対局中)の昇級が消滅。多くのファンががっかりした…のか? …同時にこの時点で「増田康宏六段が藤井聡太七段の昇級のキーパーソン」ではなくなったので、自分はある意味ホッとした。「増田康宏六段の勝利で宿敵(?)の昇級をアシスト」なんて結末は自分には耐えられない。
この時点で残り1枠の昇級の可能性は「近藤誠也五段が○なら近藤五段、●なら船江恒平六段」に絞られる。
23時14分、藤井聡太七段が勝利、しかし前述のように吉報は届かず。
23時17分、森下卓九段が勝利(…関係ないって?)。プロの対局では珍しい「詰みまで指された」。本当なら昇級争いに絡んでいたはずなんだけどなぁ(笑)。
個人的にはもっとスマートに(?)勝つ手順もあったように見えた。例えば135手目(△4七馬の王手に対し)4六の香を王手で取らせない▲5六歩とか、137手目(△4六馬の王手に対し)▲6三玉とか… しかし後で調べたところ135手目▲5六歩は△同馬で無効(以下▲同玉は△5五金から3手詰め)、137手目▲6三玉は△7二銀から頓死してしまう。…つまり見た目ほどの大差ではなかった、という事ですか。
24時08分、近藤誠也五段が勝利、その結果昇級は近藤誠也六段(B2昇級により昇段)と杉本昌隆八段に。9勝1敗が4人(2人が頭ハネ)という超ハイレベルな昇級争いとなった。
…ネット上では9勝1敗でも上がれない順位戦のシステムを「おかしい」という人を見かける。その声が多数派なのか少数派なのかは分からない(いちいち調べる気になれない)が、個人的には「藤井聡太七段が昇級できなかった事に対する恨み節」にしか見え(聞こえ)なかった。まるで「藤井聡太は全ての記録を更新しないといけない」と決めつけているかのような…(※1)
確かに将棋界のシステム(特に「順位戦」と「三段リーグによるプロ入りへの狭さ」)は他の個人競技(囲碁やチェス、はたまたゴルフやテニスなど)と比べるとかなり独特なものであるが、自分は「今のままのシステムでもいいと思う」、というより「無理矢理他の競技のようなシステムに合わせる必要はない」、むしろ「合わせてはいけない」とさえ思う(※2)。
来期のC1の順位(敬称略)は上から先崎、船江、藤井聡、髙崎、阿部健、青嶋、宮本、真田、森下、宮田というトップ10(増田康は21位)になるだろうか。「3位」は今期のような争いにならなければ8勝2敗でも上がれそうな順位であるが、さすがに藤井聡太が2敗するような姿は想像できない。もし来期の昇級予想を「競馬の複勝馬券」に置き換えたら「藤井聡太という馬券」は間違いなく的中しても100円元返し(※3)になるだろう。
C2も決着、最終戦での残り2枠は結果として「上から順番(自力昇級の目があった2人)」に決まった。及川拓馬六段は11期目、佐藤和俊六段は15期目、石井健太郎五段は5期目での昇級。…順位戦のシステム(4人に1人は一生C2から上がれない)を考慮すると大体はこんなものだと思われる、初順位戦で1期抜けなんてのは言ってしまえば「異常」の類なのである。だけど世の中そういう「異常」を基準に話を進めたがる人が多いのは何故だろう…
「当選確率(過去掲載作の採用比率)」が当初の予想の2分の1(つまり「過去掲載作の4分の1くらい」)になった
という事だろうか。…気持ちの針が「買わない(と思う)」の方に大きく振れた(笑)。
※1…11日の対局(棋聖戦・久保利明九段戦)で敗れた事で中原誠十六世名人の持つ「年度最高勝率」の更新もほぼ不可能になったが、こちらはそういった「制度」とは無関係の記録(結果)なので恨み節はほとんど(全く?)聞かれない。
※2…他の個人競技の多くは「プロになるためのハードルは(将棋と比べたら)低いが、賞金で食っていけるのはごくわずか、それどころか賞金を1円も稼げていないプロも少なくない」と言われる。それ故そういう競技のプロには「レッスンプロ」として稼ぐ人が多くいる(将棋にも「普及に重きを置く」現役の棋士はいるが、だからと言って公式戦の参加を放棄しているわけではないので対局料はもらえる。なお「指導棋士」はそういった「レッスンプロ」とは意味合いが異なる)し、テニス界で度々問題になる「八百長」が起きる遠因にもなったりする。
つまり、将棋界も同様のシステム(プロ入りや順位戦昇級の条件を緩くする)にするとプロの絶対数が増える一方で「対局料だけでは食っていけないプロ」も増え(主催者との契約金が増えたら話は別だが…)、その結果八百長が横行する… なんて事にならない保証はどこにもない。
ついでに言うと「e-スポーツ」業界もこのまま規模が拡大していくと数年後には同様の理由から八百長問題が発生するのではないか、と余計な心配をしてしまう(「e-スポーツのレッスンプロ」なんてまずあり得ないだろうから)。
※3…今は「JRAプラス10」と言って、計算上の払戻が110円未満(1円単位は切り捨てられるので払戻時には「100円元返し」)となった買い目(単勝だと支持率72.72・・・%以上)には払戻に10円が上乗せされて「110円」となる(2008年より導入、地方競馬や他の公営ギャンブルにはないシステム)。
ただし、投票法ごとの「払戻金の総額」+「上乗せされる金額の合計」が「その投票法の売得金」を上回る場合(ぶっちゃけ言うと「JRAが1円でも赤字になる場合」)はJRAプラス10が適用されず「100円元返し」になる(競馬法でそうなるように決まっている)。
ちなみにこの「JRAプラス10での100円元返し」は年間50件前後(2018年は74件)発生しているが、一番最初に発生したのはなんと「制度導入後に最初に実施されたレース(つまり2008年初日の第1レース)」らしい(…まるでジョークの世界)。
現行のJRAプラス10で100円元返しになるには9割以上(正確には90.90・・・%=全体の11分の10以上?)の支持が必要になる。…おそらく来期藤井聡太七段が昇級すると予想する人もそのくらいいるだろう=昇級の「超本命」、という意味。