DJカートン.mmix

他人に完璧を要求するのは質の悪い潔癖症のようなものだ。

順位戦勝手に論評

11月20日、一部で「音ゲー記念日」などと言われる事もある日(※1)に行われた順位戦C1。

森下卓九段△堀口一史座七段戦は近年では激レアと化した(?)相矢倉。有力な後手番急戦策が次々と現れてこの対局のような「旧24手組」(※2)が公式戦で見られる事はほとんどなくなった(「居飛車党のベテラン」同士の対局だと稀に見られるかも)。そこからお互い入城して(今ではこれも珍しいかも)先手が1筋の歩を伸ばす、所謂「加藤流」
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そこから数手進んで趣向を凝らしてきたのは後手。▲4六銀に対して△4五歩と突く筋は相矢倉ではよくある形(※3)だが、先手の銀が出てくる前の△4五歩。
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前例の△2四銀や△9五歩を入れたくない理由(例えば△9五歩は後に△9五桂と打つ手が消える)があったのかも知れないが、ここまでの後手の消費時間はわずか2分。相手が(矢倉を指してくる可能性のある)森下九段である事を考えての研究だったのかも知れない(C1の対局だとそのあたりを詳しく解説してくれる場所がまずないのだが…)。
先手はその注文に乗って▲4六歩と反発。以下△同歩▲同銀△4五歩▲同銀△1九角成・・・と進んで昼食休憩の時点で62手も進む。この時点での後手の消費時間は3分、中継の棋譜でも1手あたりの消費時間が全て1分未満(一番長いのでも上記△4五歩の「26秒」)なので、もしこれが元来のストップウォッチ計時だったら休憩時の消費時間は「0分」だった
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もしかしたらこの時点で「先手の攻めは切らせる」という読みだったのかも知れないが、実戦は▲4四銀から押し潰されてしまった。何か誤算があったのだろうか。
終局時間は13時43分。堀口七段の消費時間は7分、76手目の△4七馬に3分36秒使った以外は全て1分未満の着手だった。チェスクロック計時の対局としては異例の数字と言えよう。2人合わせても持ち時間は3時間しか使っていない(▲2:55△0:07)という高速決着だった。
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森下九段はこれで公式戦7連勝、今年度成績が14勝5敗。既に前2年の成績を上回っている(16年=9勝19敗、17年=11勝18敗)。
順位戦は4勝2敗で暫定で6番手(5勝2敗の阿部健治郎七段は森下九段より順位が下なのでここでは下の番手とした)、無敗が3人いるのでチャンスは少ないかも知れないがファンとしては可能性を信じたい。

…以前も書いたように本来なら「昇級争いの天王山」となっているべきだった▲増田康宏六段△藤井聡太七段戦。早い△4二銀を見てなのか「公式戦では初めて」という振り飛車に。対する藤井七段は△3一金~△3二玉という囲いに。部分的には「elmo囲い」なんて呼び方がある(言い換えるなら「COM将棋から発生した囲い」)らしいが、自分はこの形を故・米長邦雄永世棋聖の著書で見た事がある▲6八銀・▲6九金型舟囲いだと相手に角と金を渡すと△5五角がいきなり詰めろになる(しかも「詰めろ○○取り」になってしまう可能性が高い)のを防ぐ意味、だったと記憶している。
…結論から書いてしまうと今回の結果は増田六段にとってただの1敗では済まないような負け方のように思う。極論するなら藤井聡太との格付けが完全に済んでしまった」ようにも見えてしまう。
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最後の△5六飛なんてのはまさに「絵に描いたような決め手」であり(※4)、こういう手で負かされるとよほどの天才かマシーンでもない限り「心が折られ」ても不思議ではない(自分だったら「29連勝目の相手になった」時点で折れてるけど)。

この対局に目を向けると、敗因は何だろう。▲6二歩の垂れ歩(が間に合わなかった事)が悪かったようにも見えるが、だからと言って代わりに▲6六歩(△6五桂を防ぎながら△7六飛に▲6七銀と引いた時に△4六飛と角を抜く手を防ぐ)みたいな手はやりにくそう(まだ▲7七桂とかの方がマシかも?)だし…
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この対局はもしかしたら後世「増田康宏の息の根を止めた一手(一局)」みたいな語り方をされるかも知れない。…無論今後の成績(主にタイトル獲得数)にもよるが、「今のままでは」そうなる(藤井聡太七段に阻まれて無冠で終わる)可能性はかなり高いように思える。無論増田康宏六段が「今のままで」終わる気など1μもないだろうが…

順位戦では無敗を続ける藤井聡太七段だが(※5)、その3日後に行われた叡王戦の本戦では斎藤慎太郎王座に敗北。終盤の猛追はともかく中盤のあたりは藤井聡太七段にしてはかなり「不出来」な将棋だったようにも見える(相手によってはそこからでも逆転できたかも知れないが、気鋭のタイトル所持者ともなるとそうはいかない)。つまり藤井聡太七段であっても「将棋に波がある」わけで、この弱点?が克服された時将棋界は…
ただそういう見方をするなら増田康宏六段はそれ以上に「波がありまくる」と言える。今期だけでも順位戦も含めて「何で(この相手に)負けたの?」というような将棋が多い。そういうところまで似なくてもいいのに…(※6)


※1…初代のbeatmaniaを開発した南雲怜生(なぐも れお、主に「DJ nagureo」の名義で楽曲提供)氏の誕生日にして氏の代表作である「20,november」にかけてそう呼ぶゲーマーが結構な数いたりするbeatmaniaが世に出た1997年12月10日ではないのがポイント?である)。なお収録機種やアレンジによって「20,November」だったり「20,NOVEMBER」だったりするが、初出のbeatmaniaでは全て小文字の綴り。
「記念日」という事でこの日にこの楽曲をプレイする人が全国に出現する(した)が、現行稼働中の機種でこの曲をプレイする事はできない(KONAMI退職後「いざこざ」があって氏の楽曲はほとんど削除されて一部しか残っていない)ので、家庭用でプレイする人やこの日に合わせて一時的に古いバージョンを稼働させるゲーセンがあったりする。

※2…厳密には24手目の時点で先後同形である形を指す(この対局では△4一玉が△4三金右になっている)が、その差が大きく影響する形ではない(ここから▲6七金右△4一玉と進んでよくある形に合流している)のでここでは旧24手組と書いた。
一応書いておくと旧に対する「新24手組」は▲2六歩の代わりに▲6七金右となっている、「飛車先不突矢倉」が全盛期の24手組。しかし今では後手の急戦を警戒して早い段階で▲2六歩を入れる事がほとんどなので、新24手組は旧24手組以上にプロ公式戦では見かけなくなったと思われる。

※3…それどころかその手が有力という事で「4六銀・3七桂型」が(ひいては相矢倉そのものが)衰退した、という経緯がある。

※4…この手自体は「藤井聡太でなければ見えない手」という手ではないと思う(例えば三枚堂六段はこの直前に「いい手が来そうな気がします」とコメントしている)が、羽生善治五段(当時)の▲5二銀(これも「本人にしか見えない手」という手ではない)のようにインパクト」という意味ではこの上ない威力がある、むしろ捨てた駒が飛車なのでその印象度は▲5二銀よりはるかに強い

※5…来年2月5日に行われる▲藤井聡太七段△近藤誠也五段戦が本当の意味での「昇級をかけた天王山」になったと思われる。

※6…森下九段は第57期棋聖戦屋敷伸之棋聖(当時)に挑戦して敗退した時、島九段に

「勝てるはずだった将棋なのにどうして負けたの?」

と言われたらしい(その屋敷九段とは30日に朝日杯の二次予選で対戦する)。