DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

C1の初戦

第77期順位戦が始まっている。名人戦はまだ決着前だが基本的に影響はない(1983年のように「十番勝負」となると名人戦敗退者が過密スケジュールになってしまうが)。
C級1組は19日に開幕。…やはり世間の注目は藤井聡太七段であろうが(※1)、その初戦の相手は前期B2から落ちてしまった森下卓九段。…決まってしまったものは仕方ないので、この対局の戦形予想をしてみる。

先手は森下九段。そして「藤井聡太七段の2手目は99.99%△8四歩」という前提(確かこれまでの公式戦で2手目がこれでなかった事は1回もないはず)で考えると、

①▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩~の矢倉模様
②▲7六歩△8四歩▲2六歩△8五歩(または△3二金)~の角換わり模様
③▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩~の相掛かり模様
④▲7六歩△8四歩▲6六歩(や▲6八飛など)~の先手振り飛車

のいずれか──つまり横歩取りはない」──と思われる。厳密に言えば②の4手目が△3四歩なら横歩取り模様になり得るが、これまで藤井聡太七段がそう指した記憶がないのでやはり「横歩取りはない」と思われる。そしてこの中で(出現確率が高そうな順に)順位を付けるとしたら…

①>③>>④>>>②

何故居飛車党の森下九段が「④(振り飛車)>②(角換わり)」となるのか? と思った人はいるだろうか。
本命の矢倉、これはもう森下九段の代名詞のような戦法である。近年の傾向から「24手組」になる可能性はほぼ皆無だろう(後手は居角左美濃などの急戦や雁木になると思われる)が、それでも将棋界に詳しい人ならほとんどの人が矢倉を第1候補で予想するであろう。ついでに言うと藤井聡太七段が直近で敗れた将棋も矢倉だった(3月28日、第68期王将戦一次予選▲井上慶太九段戦)。

続いて来そうなのが相掛かり。近年は定跡が徐々に整備されてきたとは言え、角換わりや横歩取りなどと比べるとまだ「力戦」「乱戦」に持ち込む余地はあると思う。力戦乱戦は森下九段の望むところであろう。

では角換わりはどうなのか。無論森下九段にも経験値は十分にあるに違いないが、それ以上に角換わりは藤井聡太七段の得意分野、何を指しても高勝率であるが中でも角換わりは特に勝率が高い、という印象が強い(調べていないので実際は知りませんが)。得意分野の事を「土俵」と言う事があるが、藤井聡太七段のそれは「土俵」というより「魔法陣」という方が的確かも知れない。朝日杯の決勝や先日の竜王戦5組決勝などを見ているとそれこそ「人智を超えた何か」が藤井聡太七段を後押ししているように見えてしまう。
…そんな危険な場所にはできる事なら入りたく(近づきたく)ない、と思っても別に恥ずかしい事ではないと思う。例えばこれが(増田康宏六段などのように)この先何度も対局する事が予想される相手だったらそれを避けてはいられない(「魔法陣」に飛び込んでこれを打ち破らない事には「この先一生勝てない」と言ってもいいくらい)だろうが、残念な事に(?)森下九段と藤井聡太七段がそういう関係になる確率は極めて低い、もしかしたら今度の対局が「最初で最後(※2)」という可能性だってある。それだったらわざわざ相手の「魔法陣」に入る必要はない、と考えても不思議ではない。

そういう理由から森下九段が時折「裏芸」として用いる振り飛車四間飛車穴熊とか向かい飛車とか)の採用率の方が高い、と考えた。もっともこの「裏芸」は後手番で用いる事が多い(自分の知る限りでは先手番で用いた将棋は見た事がない)ので、先手番でこれを使ってくるのかと言われると自信はないが…と、ここまで予想しておいて角換わりになったら多分ズッコケると思う(笑)。

世間は完全に「藤井色」であるが、ここで森下卓ここにあり」というところを見せてほしいというのが森下教信者として(笑)望むところである。無論自らの為でもあるし、愛弟子である増田康宏六段の「援護射撃」にもなるわけだから。

ちなみに今回の対局の結果が来月の香龍会に影響する事(例えば森下九段が負けたら行かない、とか)はありません。…多分(笑)。


※1…奇しくもこの日はFIFAワールドカップの日本-コロンビア戦。…両方見たい人としてはキックオフ(日本時間21:00予定)の前に対局が終わっているのが望ましいのかも知れないが…?

※2…公式戦は今回が初手合だが、「藤井聡太三段」時代に研究会で指した事があり「角換わりで粉々にされました」と仰っている(確か「炎の七番勝負」の解説時に)。…いよいよもって角換わりを受けて立つ理由がなくなってきた(笑)。