DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

電王戦タッグマッチは将棋をスポーツに変える?

何だかセンセーショナルなタイトルにも見えるが、それ以上に意味の分かりにくいというより誤解を受けそうなタイトルであるが気にしない事に(笑)。

その発端(?)は先日(19日)の香龍会に向かう新幹線の中で読んでいた1冊の本(15年以上前に書かれた本で既に何十回と読んでいる本だが、部屋を片付けている時に見つけたので久々に読んでみた)。その中の一節にこんな事が書いてあった。

現代の格闘技では選手とセコンドには密接な関係があり、誰がセコンドにつくかが勝敗の鍵となるケースがある。体中をアドレナリンが駆け巡り、心拍数が上がった状態で戦っている選手よりセコンドの方が第三者的な立場から冷静に試合を分析できるはずで、その指示を仰ぐ事は戦略的には正しいに違いない。

そのとおりである。実際ほとんどの格闘技では試合中にセコンドやら監督やらが選手に大声で指示を飛ばしている。例外と言えるのは相撲だろうが、両者が組み合って動かない(うかつに動けない)時は第三者の指示(例えば「相手のまわしの位置」を選手に伝える、とか)が有効になる事もありそうだが、基本的に相撲は試合時間が短いのでセコンドがいても意味がない(指示を出す前に試合が終わってしまう)、とも言える。

その一方でこんな事も書いてある。

果たして(江戸時代に)御前試合で戦う剣士に対して双方の介添人が「相手の右に回れ」とか「もっと距離を詰めろ」と言った類の声を掛けた(指示を出した)であろうか?

…おそらくそんな事はしなかったであろう。これ以外にも戦乱の時代の「死合(生死をかけた戦い)例えば源平合戦の代名詞(?)と言える「やあやあ我こそは・・・」の名乗りあいで始まる武士の一騎打ち巌流島で戦った宮本武蔵と佐々木小次郎にセコンドはいただろうか? …多分いなかったであろう。
もし武蔵の大遅刻や鞘を投げ捨てた小次郎に対する「小次郎敗れたり」と言った挑発に対して冷静になるよう諌めるセコンドがいたらまた違う結果になっていたかも知れない(もっとも世間によく知られるこの「遅刻」や「挑発」自体が後世の創作らしいが…)。

このように自分の力のみで戦略を立て、精神を落ち着け、闘い、勝敗をつけるのが(日本古来の)武道」であり、同じ格闘技でも(欧米伝来の)スポーツ」と決定的に違う要素(の一つ)である。

…要約するとこんな感じである。ここまで読んでピンと来た方もいるかも知れないが続ける。
では「将棋」はどうだろう。 …言うまでもなく将棋は(前述の分け方で区分するなら)「武道」に属する競技になる。実際将棋のマナー、というよりルールで「助言は禁止」と教育されている(※1)。
しかし「電王戦タッグマッチ」ではその三者(人ではないが)の助言、言うなれば「セコンド」をルールで認めるのである。つまり将棋が(くどい様だが前述の区分だと)「武道」とは対極の存在である「スポーツ」になってしまうのである。
厳密に言うならこれまでの(第三者の技術介入を認めない)将棋がなくなるわけでは(多分)ないので、2016年以降はこれまでの「将棋」と「スポーツ将棋(ここでは『第三者の技術介入を認める将棋』という意味)」というダブルスタンダード」が並立する、という図式になる(かも知れない)のである。もしそうなった場合、「COMあり」「COMなし」といった感じの言葉が生まれる(流行する)かも知れない(…わざわざ意味を書くまでも無いでしょう)。

この「ダブルスタンダード」と言うのは非常に厄介な代物、ぶっちゃけて言うなら「その業界にとってプラスになる要素がほとんどない事象」である、つまり最初のうちは良くてもそのうちお互いが利権などを主張して最終的に仲違い(業界の分裂)なんて事になる可能性が極めて高いと思うその顕著な例が「柔道」であろう。
柔道(厳密に言うなら「日本伝講道館柔道」)と言うのは言うまでも無く日本発祥の「武道」である(※2)。しかしいつの間にやら柔道界には講道館ルール講道館柔道試合審判規定)「国際ルール国際柔道連盟試合審判規定ダブルスタンダード」が並立するようになった(※3)。
初めのうちは何とか並立できていたのかも知れないが、次第に「数の力」に押されていき今では日本国内でもほとんどの大会で採用されているのは「国際ルール」という体であり、他にも国際柔道連盟から(議決権を持つ)日本人の理事がいなくなるなど、言わば「庇を貸して母屋を取られた」ような状態である。
現今の柔道界を揶揄(危惧)する言葉として
「今の柔道は『JUDO』だ」
なんてのがある(自分は「実に上手い表現だ」と思った)が、これは講道館柔道(を創始した嘉納治五郎が目指した「武道的な理念」が今の柔道界に残っていない(汚された)という考えによるものであろう(…自分もその考えには賛成である)。

…ここまで複雑に(?)考えなくても「当事者や観戦者が混乱しやすい」というのは大きなマイナス要素と言える。柔道だと「押さえ込み」がその一例で、講道館ルール」では30秒で一本(25秒で技あり)だが、「国際ルール」では20秒で一本(15秒で技あり)である(※4)。なのでその違いを理解した上で参加・観戦しないと「何故20秒押さえ込んだのに一本でないのだ?」という事(混乱)になりかねない。

これと同じような事が将棋界でも起こるのではないか、と考えるようになった。つまり最初の数年はうまく共存(?)出来ていても、そのうちドワンゴが「金の力」でわがままを言い出して両団体の間に亀裂が入り、そのうち「スポーツ将棋」をメインとした新たな将棋団体「X(仮称)」を設立そして金の力と数の力(※5)でその「X」が将棋界の主流になってしまうという「最悪のシナリオ」が待っているのではないか、と。
例えば「選手(この将棋を指す人を『棋士』とは呼べまい)スカウター(『ドラゴンボール』に出てきた相手の能力を計測できる片眼鏡の様なもの)をつけて将棋を指すのが新しいスタンダード」なんて姿(未来図)は想像するだけでもおぞましさを覚えるし、この棋戦に出場するのが必ずしもプロ棋士である必要はない(ある意味一番盛り上がりそうなのは「プロvsアマ」という図式かも知れない)、という声が高まると「自前で選手を用意したほうが安上がり(棋戦の消滅・両者の関係悪化)」となる可能性も無きにしも非ず。
両立した団体がお互い「いいライバル」になって共栄(切磋琢磨)できればいいのだが、歴史をひも解いてみても分裂した団体がそういう関係になった話はほとんど聞いた事が無い

…自分でも「かなり突拍子もない考え(未来予想)をしているな」と思わないでもない(脈絡の無い文章がそれを物語っている)。そもそも以前にここで「これが新しい共栄共存の道(の一つ)」と述べていたくらいである。しかし冒頭の一文を読んで後いろいろ考察を重ねると「(電王戦タッグマッチが始まると)遅かれ早かれそうなる可能性が一番高そう」に思えて仕方ないのである。やはり

ドワンゴは 金を出しても 口出すな

というダークな川柳(DJカートン謹製)は真実を突いているのかも知れない(笑)。

…文章を考えている(下書きを書いている)うちにどんどん嫌な人間になっていくような気がした(笑)ので気晴らし?にボートレース浜名湖
浜名湖の最終レース(1630頃)ではこんなシーンが。
イメージ 1

レース場の向こうに虹が2本「二重虹」とか「ダブルレインボー」とか言われる現象(…そのまんまやんけ)で、内側のハッキリと見えるほうを「主虹(しゅこう)」、外側の薄っすらと見える(主虹と色の並びが反対になっている)ほうを「副虹(ふくこう)」と呼ぶそうだ。
これを見ると幸せになれるとか願いが叶うとか言われるらしいが、自分はこれを見た後に幸せになった記憶がない(笑)。その後リレーナイター(※6)を楽しんで(詳しく計算していないがおそらく収支はマイナス。この時点で幸せとは言えまい)、帰ってきて文章を仕上げる。
…パズル作家の本分はどこに行った?(笑)


※1…将棋盤の4本の脚は「梔子(くちなし)」がモチーフになっており、「梔子」→「口無し」→「口を出す(助言をする)なに通じているとされている。
また将棋盤の裏に彫られる凹みは「血溜まり」と呼ばれ、勝負に助言をしたものの首を切り落としここに乗せる、とも言われている(実用上の目的としては「駒音の響きを良くする」とか「木の中の水分を外に逃がす」ため)。

※2…ブラジリアン柔術グレイシー柔術)やサンボなど、日本の柔道を学んだ人の手によって作られた競技も多い。

※3…一言で言うなら国際ルールは「スポーツ柔道」である。
「国際ルール」が誕生した最大の要因は「階級(体重別)制」だとも言われているつまり(その規約で「嘉納治五郎によって創設された心身の教育システムであり、かつオリンピック種目としても存在するものを柔道と認める」と定めているにも関わらず)「柔よく剛を制す」の精神が蔑ろにされている、と言ってもいい。

※4…元々柔道の押さえ込みが30秒で一本なのは「押さえ込んだ相手の止めを刺す(首を切り落とす)のに十分な時間という意味らしい(この本に書いてあった)。言わばこれも武道的(≒実用的)な考えから来ているルールであり、いろいろな面でスピード化を図る「スポーツ」とは対極の考え方である。

※5…「それぞれの団体を指示する人の数」という意味。仮にそういう事態になった場合、おそらく日本将棋連盟よりドワンゴを支持する人の方が多くなると思う。

※6…そのレース場で行われる全レースの終了後から販売・実況が始まる(他場の)ナイターレース。この日(26日)を例に取ると、浜名湖12R終了後に蒲郡と丸亀のナイター(どちらも5Rから)の販売・実況が始まっている。