DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

羽生名人vs最強COMを実現させるには…?

第2回電王トーナメント。
ハッキリ言うなら「どういう結果になろうと知ったことか」という感じのイベント…だったのだが、開催の数日前に1つの関心事が生まれる。そして結果から言うと「ホッとしている

1つの関心事というのはとあるブログの記事。 …「とあるブログ」とはぐらかす意味はないので(笑)ハッキリ書くとPonanzaの開発者山本一成氏のブログの記事。

・・・今回の電王トーナメントの優勝したら、クラウドファンディングをして名人と戦う道を道を模索しようと考えてます。羽生名人と戦うにはいくらお金が必要かわからないのですが、最強コンピュータと羽生善治の戦いが見たいという人が多ければきっと集まるはずです。・・・
(原文まま)
いきなり日本語の文法がおかしいが、寛大な自分(…自分で言うな)はそれ以上は突っ込みません(笑)。

この考えに対して世間や関係者はどう考えているのだろう。最強(クラスの)COMと羽生名人の対局を見たい、という人(将棋ファンとは限らない)はいると思う。「そのために金を出せる」人がどれだけいるかは別として。
「プロ棋士には『2007年(渡辺明竜王vsBonanza、肩書きは当時)の時点でやめておくべきだった』と考える人が多い(らしい)」事から(以前ここで書いた)、関係者(主にプロ棋士はこの考え方に否定的な人が多そうだ。

…自分はどうか。この話を知った時の第一印象(?)は「不遜の極み」だと思った。
自分は「(将棋界における)不遜」というとかの阪田三吉贈名人・王将(※1)が生前
「叶う事なら天野宗歩と指してみたいものだ」
と言ったら周りの人に「不遜である」と怒られた、というエピソード(※2)を思い起こすのだが、これとは比べ物にならないくらい不遜な願望だと思ったものである。

…結果は惜しくも準優勝。意地悪な言い方をするなら
「『不遜な野望』は脆くも崩れ去った」「天罰が下った」
と言ったところかも知れない(似たような表現をネット上で散見する)が、
「人間というのは手に入れた力(武力、権力、財力、その他…)を試さずにはいられない生き物」
のようなので、山本氏でなくても最強(クラスの)COMを作ったら最強クラスの棋士(今だったら知名度的にも羽生名人)と戦わせたい、と思う(願う)のはある意味仕方ない事なのかも知れない。それこそ自分もその立場に立ったら(最強クラスのCOMを作れたら)同じような事を考えるかも知れない表向きは「このソフトは森下卓九段を七冠王にするために開発した」などと言いながら…(笑)

山本氏は自身のブログで「今回は諦めます」と書いている。ただ「今回は」という言葉から完全には諦めていないと思われる(というよりそれ以外に解釈できない)し、今後同様の事を考える輩は(前述の理由から)きっと出てくると思うので、この際もし本気で羽生名人vsCOM(以下「企画X」と表記します)を実現しようとするならどれだけの準備が必要なのか考えてみようと思う。ただし掘り下げ始めると時間がいくらあっても足り無そうなので「簡単に」。
なおここから棋士女流棋士)に関しては敬称略とさせていただきます。

羽生善治とCOM、というと避けて通れない重要なキーワードがある。
…と書くと大抵の人(?)は「対局料7億円」を想像するかも知れない(某掲示板でもこの数字がやたら目に付いた)が、真に重要なのはそちらではない。

「もしもコンピュータとどうしても戦わなければならないとすれば、私はまず、人間と戦うすべての棋戦を欠場します。そして、一年かけて、対戦相手であるコンピュータを研究し、対策を立てます。自分なりにやるべきことをやったうえで、対戦したいと思います。」
「人間とのすべての対局をやめる」ということは、トーナメント、リーグ戦をすべて欠場するということを意味します。当然、すべてのタイトルを返上することとなる。もちろん挑戦者にもなれないし、予選にも出られない。つまり、現在、プロとして得ている賞金、対局料をすべて放棄するということになります。
(「われ敗れたり」より引用)

「対局料7億800万円」というのは放棄した賞金・対局料に加え、対戦前にあった収入(地位)の補償などを加えた数字である、とも書かれている。
…じゃあクラウドファンディングでこの数字が集まれば企画Xは実現するのか、と言われれば「そんなわけはない」この数字はあくまで「羽生善治個人」に対する補償であり、企画Xを実現させるためにはそれ以外にも必要なものがある。それは羽生善治というスーパースターを(一時的にでも)失った将棋界に対する補償」である。
もしこれが不慮の事故とか病気とかで羽生善治を失った、というのなら仕方ない(?)が、企画Xの場合「個人的な欲求・願望で」「人為的に」羽生善治という存在を抹消する(しようとしている)のである。
…ここまで書いた時点で山本氏のやろうとした事は不遜とかいう前に
「将棋界に対するテロ行為」
ではないか、と思えてしまう。

…話を続けると、当然「看板」を失う日本将棋連盟自身にとっても痛手であるが(名人が空位になるなんて大問題なんてレベルではなさそうだ)、それ以上に「タイトルを返上された」各棋戦の主催者に対する補償も必要になる。ちなみにこれを書いている時点で羽生善治が所持しているタイトルの主催者は


…これだけの主催者を納得させる必要があるのだが、一体どうやって(どういう言葉・条件で)説得すればいいのだろうそもそも交渉に入る前に「ふざけるな!」とつむじを曲げられる、最悪の場合契約の解消(棋戦の消滅)という事になるかも知れない(というより「そうなる可能性が一番高そう」)。
何と言っても企画Xは前述のように「ぽっと出の人間の個人的な欲求・願望で」「伝統あるタイトルを返上する(蔑ろにされる)のだから主催者としては「馬鹿にされた」と思っても何の不思議も無い少なくとも里見香奈が体調不良(という致し方ない理由)で返上した女流王座とはわけが違う。
下手をすれば上記各社が主催する他の棋戦毎日新聞社王将戦朝日新聞社朝日杯将棋オープン戦新聞三社連合女流王位戦も契約解消、なんて事になるかも知れないし、特に名人戦順位戦を含む、以下同様)がなくなったら将棋界そのものが消滅する」可能性だってありうる
…やっぱり「将棋界に対するテロ行為」にしか思えない。

このような最悪の可能性を想定すると、企画Xを実現するのに必要なのは「一時的な金」ではなく「継続的な金」、つまり「契約解消される可能性のある棋戦を続行できるだけの金」という事になる。最悪でも「名人戦を継続できるだけの金」は用意できないと論外であろう。
名人戦の契約金は5年契約で年間4億円弱、と何かで読んだ記憶がある。果たしてクラウドファンディングでそんな金(4億×5年=20億!)が集まるのだろうか
「だったら羽生が休場(に伴うタイトルの返上)をしなければいい」
と考える人もいそうだが、羽生善治という人は(実際に会ったことはないけど)事ここに及んで自らの説を曲げるような方ではないと思う。そもそも羽生でなくても第2回・第3回の電王戦の結果を受けて対COMを楽観する棋士なんて皆無だろう。

まとめ。企画Xが「将棋界に対するテロ行為」かどうかはともかく、「極めて非現実的な話」である事は間違いない。また(金の力などで強引に)実行にこぎつけたとしてもその時点で(結果がどうであろうと)大きな混乱が将棋界に降りかかり、それによって多くの関係者(やファン)が不幸になるのではなかろうか。つまり羽生vsCOMは将棋界における「パンドラの箱」である(※3)と考えるべきだろう。それこそ「羽生vsCOMを見たい」と言って金を出した人までもが害を被る(後悔に陥る、と言うほうが適切か?)かも知れない。
実際(?)のパンドラの箱のように箱の底にΕΛΠΙΣがいればまだ救いがあるのかも知れないが、どうやらこちらのパンドラの箱にΕΛΠΙΣはいないような気がする。

世界各地に伝わる神話・宗教などにまつわる「伝説」「伝承」の類、そのほとんどが理論的・科学的にありえない事だというのはちょっと考えればわかる事である(例えば聖母マリアの処女懐妊とかモーセ十戒=海が2つに割れた、とか)。しかしそれらは誕生から数百年数千年経った今でも世に根付いているものが多い
それと同様で「科学的に見れば(?)COMのほうが強いだろう」と世間が考えてもそれを無理矢理実証する必要なんてない変な言い方をするなら「伝説」のままにしておく方が将棋界(プロアマ問わず)にとって一番健全(?)な事ではなかろうか。そうでないと将棋をしたい(強くなりたい)と思う人がいなくなってしまうような気がする。

今回も下書き中に嫌な気分になったので(笑)途中で気晴らしにボウリングへ。
「嫌な気分」はボウリングにモロに影響する。狙ったところにボールが行かない、ボールが思い描くラインを走らない、ストライクがなかなか出ない、簡単なスペアをミスする…
結果全然スコアが出ない500シリーズ(簡単に言えば「連続3ゲームの合計が500点」)にすら行かない。 …とりあえずレーンのせい(※4)にしとけ(笑)。
それでも半ば意地で12ゲーム投げる。 …0.7kg痩せた(ゲーム前と直後に簡易ヘルスメーターで測定。ゲーム中に摂取した水分の量を差し引いて計算)。まぁ痩せたのは「運動の結果」でしょうけど。


※1…姓はメディアによって「阪田」「坂田」2種類の表記が混在しているが、ここでは死去時の戸籍(存命中に戸籍上の姓が「坂田」から「阪田」に変わったという)に合わせて「阪田」とする。
また「吉」の正しい字は上が「土」(「袁」の下の部分を取ったもの)だが、環境によって表示できない漢字なのでここでは「吉」とする。

※2…かつてNHKの将棋講座で森下九段がそう仰っていた。

※3…これに関しては「もっと早く渡辺明vsBonanza、清水市代vsあから2010、第1回電王戦、のいずれかの時点)パンドラの箱は開けられていた」と見るほうが的確かも知れない。つまり企画Xは「パンドラの箱の隅に隠れていた更に強力な箱」である、と。

4…かなり空いていて「レーンの種類を選べた」ので、何となく「オイルの多いレーン」を選んだ精神状態はともかく、そういう(どういう)レーンでもコンスタントに打てないといけないのだが…