「仕事ができれば遅刻しても構わない」
「仕事のできる奴は普通に遅刻する」
なんて事を宣う奴がいたが、それを聞いた自分は
「こいつの脳みそはウマ○のフンでできてるんじゃないか?」
と思った。
ビジネス系の本を時折読むが、少なくとも自分が読んだ限りでは「遅刻を称賛する」ように書かれたものはただの1つも見た事がない。その多くは「しょっちゅう遅刻をする人間は信用に値しない」という内容で一致しており、中には「商談に何度も遅刻するクライアントとはすぐに契約解除しろ」とか「しょっちゅう遅刻をする奴は『自分は大物だ』と周りに見せようとしているだけ(の役立たず)」なんて書いているものもある。実際に自分も幾度となくそれらの言葉が正しい事を実感して(遅刻常習犯に酷い目に遭わされて)いる。…そしてその「信用ならない奴」の言葉をありがたがる(度々ネットニュースの記事として扱う)奴もおそらくは同類だと思う。
遅刻というのは言わば「他人の時間を盗む(あるいは奪う)行為」である。つまり大袈裟に言うなら遅刻=「犯罪(窃盗ないし強盗)」なのである。…しかし悲しい事にこの国では「他人の時間の窃盗(強盗)」は罪には問われない。もっとも「時間の窃盗罪」を問うている国がこの地球上にはないような気がするけど。
「仕事ができれば遅刻しても構わない」なんて考える奴はおそらく
金の力があれば何でもできる
という風に考えているのではなかろうか。つまり今後何らかの犯罪行為に手を染めても金の力で逃げ切れる(あるいは隠蔽できる≒事実を捻じ曲げられる)と考えている可能性が高く、そして実際にそれを実行する可能性が高い【*1】。そこまで行かなくてもこういう輩の精神構造は昨今頓に見かける「飲食店での迷惑行為」をする奴とほとんど変わらない(「こちらは金を払ってやってるんだ」的な思想がその根底にある)ように思う。…こういった「傲慢の二文字が服を着て歩いている」ような奴等は堕天使ヴィネのマハジオンガを喰らってくたばっちまえばいいのに(ネタが古い上に分かりにくい…)。
一方でちょっと特殊なのが将棋や囲碁の棋士。理論的な話をすると対局に遅刻した場合、「遅刻した人の時間」は3倍速で失われていくが、「対戦相手の時間」は1秒も失われない。その一方で対局中は目の前にいる相手(の考慮中)に何度も何時間も待たされる、というのは冷静に(?)考えると妙な現象。…もっとも「持ち時間」は双方に同じだけ与えられるので【*2】「相手の考慮時間中は待たないといけない」という当たり前の(?)話を理解できない人に将棋を指す(囲碁を打つ)資格などない、と断言してもいい【*3】。…ただそれを言うと「花村元司九段のプロ編入試験」はどーなのよ、とツッコまれそうだが。
…まとめるなら、呼吸するがごとく平然と遅刻をする(しても構わないと考えている)奴とは可能な限り迅速に関係を断ち切るのが最善である、という結論で間違いないだろう。もっとも「理屈の上では」最善とわかっていてもそれを実行できる(権限のある)人というのはなかなかいないのだが…
参考までに(?)前述の「花村元司九段のプロ編入試験」の話を。試験対局は6局行われたが1戦目2戦目と連敗。これを受けてこの編入試験を(実質)プロデュースした稲垣九十九という人は慌てた。そこで彼は一計を案じ「花村は賭け将棋で戦った方が力が出るのではないか」という事で裏で賭け将棋の対象となり、それに加えて対局場(将棋会館ではなく「湯河原の旅館」と記録に残っている)の別室ではそれとは別の賭博(オイチョカブ?)も行われていた。この時の対戦相手である小堀清一六段(当時)【*4】は所謂「長考型」であり、しかも持ち時間は各7時間だったというから正反対の早指しタイプである花村にしてみれば「リズムが合わない」のだろう、何と
対局中(相手の考慮中)にもかかわらず前述の賭場に度々顔を出していた(『打っている』最中に指された時は記録係が呼びに来た)
という。…別に相手の権利(?)を奪うような事はしていないとは言え、今だったらいろいろ問題になりそうな話である。ただこれが功を奏したのか、小堀六段との2局(半香、つまり「平手」と「香落ち」で1局ずつ)を連勝、続く大和久彪七段(当時)【*5】戦でも裏で同じような事が行われこちらも2連勝、試験結果は4勝2敗で「付け出し五段」でのプロ入りとなった。またプロになった後も相手の考慮中にスポーツ新聞(主に競輪の欄)を読んでいた事もあったというからよくよく考えるとトンデモナイ(けど面白い)先生だと思う。
*1:世の中には「まさに現在進行形で」国外逃亡(UAEは基本的に内政不干渉なので「他の国の犯罪者の逃亡先」としては最適な国なんだとか)している奴もいれば「楽器ケースの中に隠れて国外逃亡」する奇怪な奴もいるくらいだから。それに冒頭の「発言者」も過去にネットでやらかした時に「金の力で逃げ回っていた」ような記憶があるのだが…
*2:王位戦の特別対局のような例外(女流王位は持ち時間1時間、王位の持ち時間は10分)もたまにあるが今は考えない事とする。
*3:今はほとんどないと思うが昔は「てめぇは長考するくせに相手には『早く指せ』と脅す」輩をよく見かけたものである。
*4:1912年生まれ、1986年に「当時15歳の」羽生善治四段とし、後に破られるまで「最も年齢差の離れた二人の対局」の記録であった。
*5:升田幸三が若手時代にライバル視していた事で知られる。「駒柱(1つの筋の9マス全てに駒が並ぶ)は縁起が悪い」と言われるようになったのは大和久七段が「駒柱が出現した自身の対局の直後に発病して入院、半年後に急逝したから」という説が有力。