「オリジナル」ではこの将棋における飛車を「根津飛車」と呼び、その動き方が特殊である(それ以外のルールは本将棋と同じ)。
以下詰パラから引用。
★根津飛車が動くときは、1手のうちに通常の飛車の動きを必ず2回行う。
★1回目の移動では縦横に走ることのみ可能で、駒を取る事はできない。
★1回目に縦に動いたら2回目は横に動かなければいけない。逆も同様。2回目は駒取りができる。
★根津飛車を打つ時は打つだけで1手とみなす。1手の間に「根津飛車を打って、その飛車を動かす」のは禁止(…これができたら「飛車を持駒にした瞬間」にほぼゲームが決着してしまう)。
★成りは、1手の間に敵陣に入る・出る・敵陣内を移動したときに成ることが出来る。成ると普通の龍に戻る。
この独特かつパワーバランスの取れた動きが(東大将棋部)部員にバカ受け、とある。
この「飛車」の部分を「角」に置き換えたらどうなるか、という事らしい。つまり
★根津角が動くときは、1手のうちに通常の角の動きを必ず2回行う。
★1回目の移動では斜めに走ることのみ可能で、駒を取る事はできない。
★1回目に右上がりのラインに動いたら2回目は右下がりのラインに動かなければいけない。逆も同様。2回目は駒取りができる。
★根津角を打つ時は打つだけで1手とみなす。1手の間に「根津角を打って、その角を動かす」のは禁止。
★成りは、1手の間に敵陣に入る・出る・敵陣内を移動したときに成ることが出来る。成ると普通の馬に戻る。
…という事になる。
例えば5五にいる「根津角」の動ける場所は最大で下図のようになる(駒を飛び越える事はできないので盤上に駒がいる実戦ではもっと少なくなる)。「通常の角の動きを必ず2回行う」ので、通常の角の利きのマスに到達する事はできない(根津飛車も同様)。ちなみに通常の角は盤の中央に近いほど動けるマスの数が増えるが(「外周部=8」~「5五=16」)根津角は盤の中央に近いほど動けるマスが減る、という不思議な駒である。
敵陣(オレンジ色のマス)に移動する場合は成・生を選択できる。
水色のマスに関しては「『1手の間に敵陣に入る・出る』を満たしているので成れる」とも解釈できそうだし、「敵陣に『着地』していないので成れない」とも解釈できる。通常の将棋にこういう動きをする駒がない(根津飛車もこういう動きではない)のであまり真剣に論議されたことはないが、他の(敵陣を『通過』できる)フェアリー将棋だと「(通過だけでは)成れない」ようなので、とりあえず暫定的に「成れない」としておく。
最終的にどちらにすべきかはテストしてみないと(どちらがゲームとして面白いか)分からないが、どちらの場合でもあらかじめ決めておかないと揉める原因になる(例えば下図のような局面は「成れる」と1手詰になるので)。
このように動きが根津飛車以上にトリッキーである(しかも斜めのラインなので一目で分かりにくい)ので、意外な手筋や詰みが多数あると思われる。例えば下図の局面は▲4六角までの1手詰め。▲24→5一角のラインと▲73→5一角のラインを同時に防ぐことができない。ちなみに同じようでも▲3五角だと△6二玉!と飛び出す手で逃れる(1回目の移動で6二の駒を取る事ができない為)。
下図は▲2三飛まで1手詰め。△同玉でも△1二(1四)玉でも角で取られてしまう事を確認してもらいたい。同じようでも角の位置が5二だと▲2三飛には△1二玉で逃れる(飛車が邪魔で1二に角の利きが届かない)。
下図は一見して何もなさそうな形だが、▲3五角や▲7五角がなんと王手飛車。こういう手筋があるので、玉や飛車の斜めのライン(コビン=上だけとは限らない)には特に気をつける必要がありそうだ(下図の例のように「玉側の端歩もマイナスになる可能性がある」)。同じようでも▲1七角だと△4四銀!や△2六飛で両方防がれる上にその駒も取れない(▲3五角だと△4四銀でも13経由で飛車を取れる)。
さて、これで実際に対局するとどうなるのか。…おそらく先手は初手に▲7六歩と突くであろうが、この1手指しただけの何気ない局面に気をつけないといけない事がある。
1.後手は△3四歩と突く事ができない。
△3四歩と突くと3三の地点が空くので、▲33→5一角といきなり玉を素抜かれてゲームが終了してしまう(笑)。
歩を突かなければ3三の地点に駒がある(1回目の移動で3三の駒を取る事はできない)ので王手にならない。
2.5三歩の取りになっている。
このまま放置すると▲44→5三角(成or生)と取る事ができる。まさかいきなり取りになっているとは思わないので油断しやすい。
…ただ、もしかしたらこの歩取りを意図的に放置する戦法もあるかも知れない。例えば初手から▲7六歩△3二金▲5三角『成』とすると△3四歩が何と「王手馬取り」になってしまう(※1)。
馬に成ると根津角の動きを失うので▲2二馬とはできない。ここで部分的には▲4四馬!が妙防になるのだが、今回の場合普通に△同歩と取られるので無効。…つまり3手目に▲5三角成とすると先手敗勢である。
そこで歩を取るとしたら▲5三角『不成』である。
この局面は王手がかかっている(42→5一と62→5一の2つのルート)。どこに逃げても王手を外せる(△4二玉・△6二玉も根津角の死角なので取られない)が、どう応じても(例として△4一玉に)▲7七角不成△3四歩▲5八飛、とこちらの歩のないところから殺到されたらあっという間に潰されそうである。
しかし初手▲7六歩に△8四歩と突き、▲5三角不成△5二玉▲7七角不成△8五歩▲5八飛△8六歩▲同歩△同飛(角で取れない)▲8八銀△7六飛▲8七銀△7四飛▲5六歩△5三歩、となると後手は大分手損にはなるが歩損を解消して玉頭の傷も解消できて一安心、となるが、途中にいろいろと変化手順がありそうなのでこの手順が成立するかは要研究(笑)。そもそも△5三歩の局面は後手の飛車は見た目以上に狭い(形的に△8四飛としたいが▲同角と取られる)ので、成立したとしても後手が好んで選ぶ形とも思いにくいし。
後手がこういった乱戦含みの手順を避けるとすれば▲7六歩には5三を受ける手を指す事になる。考えられる手としては△5二飛、△5二玉、△6二銀などがあり、トリッキーな受け方としては△4四歩(4四を通過できなくする)や△3二銀(角の利きが31→5三と利くようになる)というのもある。ただ、どれを選択するにしても大なり小なり制約があるので悩ましい。例えば、
・△5二飛…振り飛車党ならこれで不満はないだろうが、それでも玉を7二に動かすまで△5四歩を突けない(6二に角が利いてくる)という制約がある
・△4二銀…次にすぐ△3四歩を突ける(角が浮いているが相手の角の死角なのですぐは取られない)が、相手に振り飛車にされた時の駒組みで苦労しそう
根津角はそのトリッキーな動きから序盤から激しい空中戦(?)になりそうにも見える。無論双方が望めばそういう戦いになるだろうが、上記のように落ち着かれると根津角だけで敵陣を攻略できるとはとても考えにくい。むしろ攻めの主役は通常の将棋と同様に飛車になる可能性の方が高く、そして銀や桂といった小駒も上手く攻めに参加させる必要があるだろう。ただ、相手の角が意外なところに利いていたりするので、駒組みには普段以上に慎重を要する事になると思われる。
…そんな将棋をフィッシャールール持ち時間の短いルールで指す、というのは流石に無理がありませんかねぇ?(笑)
26日に稼働開始した「ノスタルジア Op.2(※2)」と同時進行(?)の研究なので随分手抜きになってしまったが、とりあえず「ゲームとして成立しない(「角が強すぎる」とか「簡単に結論が出る」とか)」という事はなさそうである。…多分(笑)。
※1…このブログを読んでいる方なら多分御存知だろうが、柿木将棋Ⅸで
「新規対局」、または「ツール」→「思考・対局設定」を選んで「対局」タグを開き、「自由ルール(人対人のみ)」にチェックを入れる
事で通常ではない駒の動かし方(つまりフェアリー将棋)を入力する事ができる(この記事の図面もこの方法で入力・作成している)。Kifu for Windowsの場合は
「ツール」→「各種設定」から「動作」タグを選び、「ルールチェック」のチェックを消す
(柿木将棋と反対で「チェックを付ける」ではないので注意)
事で同様にフェアリーの棋譜を入力できる。
この入力方法は「敵陣を『通過』したか」の判定ができないので、自動的に(?)「根津角は敵陣を『通過』だけでは成れない」と決まってしまう(笑)。
※2…稼働開始時点で「押した鍵盤がすり抜ける」という致命的な不具合が時折発生するので、ぶっちゃけた話「まともにプレイできる状態ではない」。近日中にオンラインアップデートで改善が図られるとは思うが…(今のオンラインゲームはそういう事ができるのが長所だと思う。ファミコンとかの「売りっぱなし」のソフトだと発売後に致命的な不具合があっても改善しようがないので)
下の連続写真がその瞬間。所謂「ベチャ押し」しているのはともかく(笑)、ちゃんと弾いたはずの3つのノーツが反応せず(◆Justとかの判定をされずに)下にすり抜けてしまっている。…これではとてもゲームにならない。余計なモードとかを盛り込み過ぎるからこうなったのかも?