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それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

イベントが不作(?)なら書籍で…

23日に予定していた駿棋会は同日に「西」に行く用事ができたために行けなくなった。
8日の木村一基九段(先日昇段した)のイベント、16日の詰将棋全国大会(※1)も仕事の為参加できず、夏休み恒例の「将棋まつり」もタイミングが合わないものが多い(ついでに言うと森下九段が出演する将棋まつりが見当たらない、というのもある…)

そういう時は「読書の夏(?)」という事で最近出版された将棋関連の書籍に触れようと思う。

・NHKテキスト・将棋講座8月号
表紙絵が森下卓九段。森下九段が表紙(の絵や写真)に使われたのは講座(森下卓の相居飛車をマスターしよう、2008年度後期)の講師を担当されていた時以来ではなかろうか、と思う。
やっぱり(?)メインはその森下九段が登場したNHK杯の観戦記。
イメージ 1
後手が△6六馬と銀を取った局面(テキストではこの局面の▲8五桂の向きが反対になっている、という誤植がある)。本譜の▲7三桂成と桂を取った手がやや甘く、▲3四歩(△同歩なら▲3三歩)と迫る手があったという。
▲7三桂成に△5五角。
イメージ 2
ここが先手にとって最大の(最後の?)チャンスで、▲8二飛が攻防の一手になったという。対して△6六銀は▲5二飛成(△7七銀成と銀を渡すと▲3一銀以下の詰めろになる)で先手有望、△6五銀には▲8六飛成(▲5二飛成は△7六銀でこの銀を取れないので勝てない)で難解ホークス(笑)、という事らしい。実戦は▲6八金上としたために△6五銀が厳しくなり、以下は放送されたような結果に。

「負けるにしても金は5九に置いておけなかったんです。残したくない。棋士としての思いなんです」

感想戦が終わった後、控室で森下九段は呻くようにこう言ったという。…この言葉の意味を理解できる人(プロ棋士を除く)はどれだけいるのだろう。少なくとも「人間でない存在(COM)」には絶対理解できない話である(笑)。今の若い世代にもまずわからない感覚だと思う。…などと偉そうに語る自称森下教信者(笑)の自分でもせいぜい3分の1くらいしか分かっていないと思う。
自分だったら「どうやっても負けなら投了図での遊び駒を1枚でも減らそう」などとプロ棋士気取りな事(笑)を考えるかも知れないが、おそらくそんな軽い意味ではないと思う。そりゃあ「棋士としての思い」は棋士になった事のない自分には到底理解できる話ではないので(笑)。

・堅陣で圧勝! 対振り銀冠穴熊
森下九段の弟子である増田康宏四段の著書。「銀冠穴熊」という囲い自体は居飛車振り飛車問わず昔から存在するものだが、どちらかと言えば「銀冠でも十分だけど、折角だから(?)もっと硬くしよう」
と言った「銀冠からの発展形」という色合いが濃い。しかしこの本で扱っている銀冠穴熊は「最初から銀冠穴熊を組むという前提」で駒組みが進められる(ので通常の対振り飛車と序盤の手順が異なる)。
構想自体はそんなに複雑なものではないのでアマチュアの人でも指しこなすのは難しくないと思う。ただこの本の難点(?)として、マチュア間で人気のある「三間飛車」と「ゴキゲン中飛車」に対する方法が載っていない。何故載っていないのかは本書に書かれているのでここには書かないが、「この本(戦法)のメインは対四間飛車穴熊を含む)という事はレビューとして書いておこうと思う(四間飛車だってアマチュアでは今でも人気はあるが)。

最近では佐々木勇気六段(先日昇段した)に「いいところを持って行かれた」せいで影が薄くなった(?)感のある増田四段だが、そんな増田四段のエピソードの中に

詰将棋は全く解かない」

というのがある。


…間違いなく全国の詰キストを敵に回している(笑)。もっとも昔からではなく、「三段の時くらいにやめるまではめちゃくちゃ解いていた」そうである。素人目にはそんなんで大丈夫なのか、と思ってしまうが、先の新人王戦では一見して詰まないと思われていた局面での難解な詰みを読み切っているわけだし、やっぱり増田四段は藤井四段とは違う意味で「ただものではない」と思う。

一部では「6巻で終わりじゃないの?」みたいな噂が立っていたみたいだが、一気に読んで(※2)思ったのは「6巻どころか7巻でも終わる雰囲気ではない」。
アニメイトで買うと「扇子付き」の特別版(扇子代は1,300円)を売っていた(買ってしまった…)が、その扇子は「扇ぐたびにミシミシと音がする(すぐ壊れそう)」というのはどういう事なのだろうか(笑)。
それにしてもラノベってのはどうして「面倒なキャラ」ばっかり増えるんでしょうね…

・完全版 森下の対振り飛車熱戦譜
…ある意味今回の記事のメイン(笑)。以前も書いたけど過去に上梓された「森下の四間飛車破り(1996年8月出版)」と「森下の対振り飛車熱戦譜(2002年11月出版)」を1冊にまとめたプレミアム版。…全部並べようとしたらどれだけ時間が必要になるかわからない(笑)。
前者は森下九段のデビューから平成7年度末(1983年9月~1996年3月)までの全ての四間飛車の対局80局が収録、後者はそれ以降の対振り飛車(対四間飛車以外もある)から厳選された20局が収録されている。

収録されている将棋の対戦相手(敬称略)は…
8局…藤井猛(1:7)
5局…久保利明(0:5)、瀬戸博晴
4局…大山康晴小林健二、鈴木大介(1:3)
3局…中村修(1:2)、小倉久史(1:2)、室岡克彦、植山悦行河口俊彦、櫛田陽一、加瀬純一、依田有司
2局…勝浦修、佐藤大五郎、真部一男村山聖、日浦市郎、菊池常夫、関屋喜代作、中田功、飯田弘之
1局…中原誠谷川浩司、森安秀光、大内延介三浦弘行(0:1)、他全部で28人

(A:B)表記のある棋士はA…「森下の四間飛車破り」、B…「森下の対振り飛車熱戦譜」、に収録されている対局数。表記のない棋士の将棋は「森下の四間飛車破り」に収録。
やはりと言うか、「振り飛車御三家」をはじめ振り飛車の代名詞的存在と言える棋士との対局が多い(ちなみに久保王将との初手合は「森下の四間飛車破り」刊行の後)。

まだ届いたばかりなので簡単に目を通しただけだが、少し読んだだけでも今まで知らなかった意外な話が出てきて面白い。中でも「藤川流」と呼ばれる対四間飛車(と言うより対藤井システム)の「銀冠穴熊」がある(当時のアマチュア強豪である藤川清美さんという方が考案した指し方なのでそう呼ばれるらしい)のは驚いた。手順や最終的な形は微妙に違うが、「最初から銀冠穴熊に組む前提の駒組」と言う意味では増田四段の銀冠穴熊と相通ずるところがある。いつの時代でも「時代の先を行く考え方」ができる人はいるものなんだなぁ…(笑)。
「知る人ぞ知る」というような話だが、森下九段は故・大山康晴十五世名人との対戦成績が「6-0」である(4局が四間飛車=収録局、残り2局は三間飛車と向かい飛車)。以前森下九段が「上手く指せたと思うのは最後の1局だけ」と謙遜されていたが、羽生三冠の対大山名人戦が5-4(※3)なのでよくよく考えると実は相当凄い事だと思う。

この本の難点(?)は「カバーがない」という事。これの何が問題なのかと言うと、この手のタイプの本は何度も読んでいるうちに表紙を覆っているフィルム(?)がだらしなく剥がれてしまう(コンビニとかで売っている「ワンコイン本」を持っている人ならどういう事かわかると思う)。まさか「読まずに飾っておく」わけにもいかないので何か対策を考えようと思う。

以下イベント絡みの与太話(?)。
9月の両国イベントは9日に佐藤天彦名人と戸辺誠七段が登場するとの事。以前情報収集(?)した時には出演者の候補にその名前はなかった。
自分は「9月の両国イベントは9日に行われる」という「一点読み」で既にある程度の予定(ホテルの予約など)を組んでいた(正確には他の日だったら「休みが合わないor青春18きっぷが使えない」ために参加できない)のである意味安心している。
現時点では詳細(イベントの内容や同日に行われる指導対局、場合によっては開催場所がいつもと違う可能性もある)は発表されていないが、この日の東上はほぼ確定である。終わり次第即帰宅、という弾丸スケジュールになりそうだけど…(笑)

前述の木村一基九段のイベントで木村九段が色紙に揮毫している写真があったが、そこで揮毫していた文字が

孜々不倦

…見た事がありません(笑)。「孜」というと極めて短期間で辞めた総理大臣の名前だったような気もするが…
「ししふけん」あるいは「ししとしてあぐまず」と読み、「辛い事が有っても途中でやめる事なく(不倦)努力をし続ける事(孜々)、という意味だそうである。以前は「百折不撓」という言葉をよく揮毫していた記憶があり、どちらも木村九段の棋風(と人間性?)をよく表しているように思う。ただ、それの前の扇子の揮毫は「楽勝」だったはずだが…


※1…藤井四段のおかげで(せいで?)Yahoo!のトップニュースとかでも詰将棋全国大会と門脇芳雄賞の事に触れている記事があった。おそらくその記事を見てこの2つの存在を知ったという人(にわか将棋ファン)も多いのだろうな、とか思いながら。

※2…ある意味「嫌な事」なのでさっさと片付けてしまった。それにしても「家以外の場所の方が読書が捗る」のは自分だけだろうか…?(イオンのアニメイトで購入してそこのフードコートで一気に読み切った)

※3…うち1局は非公式戦(お好み対局、大山勝ち)。また最後の対局は大山名人死去に伴う不戦局となったのでここでは対局数に入れていない(こういう場合羽生三冠の通算成績には「1勝」がカウントされるが大山名人のそれには「1敗」がカウントされない)。