DJカートン.mmix

他人に完璧を要求するのは質の悪い潔癖症のようなものだ。

やっぱり森下九段の将棋を見れるのが一番落ち着く。

世間の注目がどうであれ、一番気になるのはやっぱり自分が応援している人の試合である。将棋だったら森下卓九段の対局であるし、ボートレースだったら○○選手のレースだし…

6月4日放送のNHK杯、▲森下卓九段-△豊島将之八段戦は矢倉の進行。最近の矢倉は後手が素直に(?)駒組みをせず左美濃からの急戦を見せるのがトレンドのようだが、本局は後手の豊島八段が先手の駒組みに追従するような形で進む。そんな中先手の森下九段は21手目にして早くも▲3五歩と突っかける。
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この局面と森下九段というキーワードから一つの対局(2007年の日本シリーズ決勝▲森内俊之名人(当時)-△森下卓九段戦)が閃いた人は間違いなく森下教の信者です(笑)。

…それはさておき、最近はCOMの影響だろうか先手後手問わず仕掛けのタイミングが早くなっている。言い換えるなら一昔前のような「お互いしっかり玉を囲ってから開戦」という将棋が少なくなっている。同じ玉を囲うにしても簡素化して(かける手数を少なくする、例えば居飛車左美濃だと「△3二銀・△4二玉・△3一玉の3手」で大体終わり)仕掛けのタイミングをうかがう、というのが(主に相居飛車の)主流という感じである。
中盤は森下九段がややリードしているような将棋に見えたが、そこは「序盤・中盤・終盤全てに隙がない」豊島八段、容易には崩れない。
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7六の銀を引いて銀冠の形を作る、一見して「玄人好み」という手だが、放送された感想戦ではこの手が良くなかった(代わりに▲6八金だった)、と言う。7五への利きがなくなったので△5六歩▲同銀△5七角が厳しくなってしまった(銀が7六のままだったら▲6七金がある)。以下も豊島八段が緩みなく攻め続けて最後は即詰み。
詳しい解説はテキスト8月号に掲載される模様なのでそちらを待ちたい。

6月7日の順位戦1回戦、▲森下卓九段-△戸部誠七段戦は後手のゴキゲン中飛車に対して丸山ワクチン。対ゴキ中の戦法の中では比較的「力勝負」になりやすい戦形、というイメージがある。とは言え、この将棋の先手の陣形は力勝負というものを超えた何か、という感じ。
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居飛車党&森下ファンの自分でもこの局面で「どちらを持ちたいか」と聞かれたら「…後手がいい」と答えたくなる陣容である(笑)。しかし、こういう形から「悪力」で何とかしてしまうのが森下九段である。途中千日手にする変化もあったがそれを放棄して飛車の取り合いに。そして迎えた最終盤。
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ここで一目指したいのは▲6一龍。△6一同銀は▲8三角成(か成桂)で詰み、このままでも▲8三成桂からばらして▲6三龍以下、または▲7四金△同銀▲9五金△7三玉▲7二成桂までの詰めろになっている(ので△5六桂と角を取っても詰めろは消えていない)。控室でも▲6一龍が決め手と言われていたところ、森下九段の着手は▲8五銀。以下△7三玉に▲7二成桂。…玉金銀どれで取っても詰まなさそうに見えるので
「最後の最後でミスった(勝ちを焦った)か?」
と思ってしまったが、△7二同玉▲8三角成△同玉▲7四銀打…以下即詰みで先手の勝ち(ちなみに結論だけ書くと手順中の▲7二成桂はどれで取っても詰む)、公式戦通算900勝となる節目の勝利。

…見ていて自分が恥ずかしいと思った。森下卓九段を何だと思っていたのか。タイトル挑戦6回、棋戦優勝8回、A級10期…などの実績を誇るトップ棋士である。そういう人がこのくらいの(?)詰みを読み切れないとかあるわけがない。それなのに▲8五銀を「暴発」と思ってしまった自分は…

NHK杯は敗退したが順位戦は幸先のいいスタート。順位が一番下で降級点持ちなので6勝(降級点消去)するまで安心できないが、初戦で勝つのと負けるのとではやはり(心理的に)全然違う。