DJカートン.mmix

昨今流行っている「ジェンダーレス」とかいう言葉を使いたがる人は「差別」と「区別」の違いがわかっていないんじゃないか? と思う。

「死の組」という言葉

第9回朝日杯将棋オープン戦の2次予選の組み合わせを眺める。勿論(?)一次予選を勝ち抜いた森下卓九段の次の対戦相手を知るためだが(笑)。
本棋戦の二次予選は一次予選を勝ち抜いた16名と予選免除順位(※1)9~24位の32名が4名ずつ8グループに振り分けられ、各グループの勝者1名が本戦トーナメントへ進出する。早指し棋戦故に若手棋士の勝ち上がりが多いせいもあるだろうが、九段棋士のいないブロック(今年だとAとH)もある一方でCブロックのように八段と九段しかいないブロックもあったりする。森下九段はその「八段と九段しかいない」Cブロックに入ってしまった。初戦は広瀬章人八段、反対側には藤井猛九段と行方尚史八段と、四人ともA級、タイトル挑戦(以上)の実績があるブロック(※2)である。しかし勝ち上がれるのは一人だけ。
既存の用語を用いるなら「死の組」というやつであろうか。わざわざ説明する必要はないかも知れないが、この「死の組」という言葉は「予選で1つのグループ内に有力候補と目されているチーム(選手)が予選突破数より多く存在する状態」、つまり有力候補のうち1チーム(以上)が予選で敗退してしまう事が決まっているブロックを指している。主にスポーツの世界、中でもサッカー(ワールドカップ欧州選手権のグループリーグ)でよく使われる言葉である。将棋の世界でこの言葉が使われることはあまりないのは、トップ棋士が予選で潰しあう、という事がほとんどない(大抵は予選免除されている)からという事情のせいかも知れない。

この「死の組」という言葉、一体いつから使われるようになったのか。今はWikipediaで簡単に調べられる時代になった。そうやってネットなどで簡単に手に入れた知識と言うのは往々にして身につかない(すぐに忘れてしまう)ものであるが、ここではそういう話はしないでおこう。
サッカーでよく使われる用語という事で、その発祥もサッカーのワールドカップが起源であった。1970年に行われたワールドカップメキシコ大会で地元メキシコのジャーナリストが(メキシコの公用語であるスペイン語で)grupo de la muerte(英語だと「group of death」、直訳すると「死の組」」という表現を用いたのがその始まりとされている。ちなみにその12年前のスウェーデン大会では同様の意味を持つ言葉として「巨人の戦い」という言葉が用いられている。

今ではサッカーに限らず様々なスポーツでこの死の組という言葉を聞くようになった。それは別にいい事(?)だと思うが、この死の組という言葉をやたらと強調するのは時に滑稽に見える。いつ・どこで・誰が言ったのかは忘れてしまったが、予選リーグ(もしかしたらサッカーの話ではなかったかも知れない)の組み合わせを見て
強いて言うなら○○が死の組でしょうかねぇ」
なんて事を宣った人がいたが、正直「こいつアホか?」と思ったものである。確かに見ている方からすれば死の組の動向というのは面白いとは思う(当事者にしてみればいい迷惑かも知れない)が、だからと言ってわざわざ「強いて言うなら」という接頭語を使ってまで死の組という言葉を使う──というより死の組を作り上げる──意味が理解できない。そうでなくてもサポーターというのは自分の国(チーム)が少しでも厳しいグループに入っただけで「死の組に入ってしまった」と騒ぎ立てる人種であるし、実際に戦う当事者(選手や監督など)は「自分のいるグループが最も厳しい『死の組』だ」と感じている人がほとんど(そう思うのが人間心理というもの)だと言うのに。
もしかしたら死の組という言葉を使う事がかっこいい(頭がいい)とでも思っているのかも知れない。…世の中にはいるんだよなぁ、「○○という言葉を使う人は頭がいい(ように見える)」と思い込んでいる人。そういう人を見るたびに使う言葉はよく選ばないと、と再認識させられる。


※1…組み合わせ抽選の時点で
1.前回ベスト4以上
2.タイトル保持者
3.一般棋戦優勝者(※3)
4.前回本戦進出者
5.順位戦のクラスと順位(だと思うがハッキリしなかった)
の順に順位がつけられ、1位~8位は一次予選と二次予選免除(本戦から登場)、9位~24位は一次予選免除(二次予選から登場)となる。ちなみに「予選免除順位」という正式な用語は存在しない(この棋戦のシステムを説明するために勝手に作った造語)。

※2…4人中3人がA級&タイトル挑戦(以上)の実績がある棋士、という組み合わせは過去に何度かあったが、4人全員が、という組み合わせとなったのは9回目にして初めて。

※3…Wikipediaにはこの前に「永世称号者」という項目(優先順位)があるのだが、それだと谷川浩司九段(十七世名人有資格者)が一次予選で対局した理由が説明できない。
考えられる理由としては「規定が変わった(Wikipediaが訂正されていない)」か「永世称号名乗っている棋士のみ(有資格者というだけでは対象外)」のどちらかだが、答えがわからなかったのでここではこの項目をカットした。