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それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

戦略に通ずる者は戦術にも通ずる

…なんて格言があるのかはわからないが、歴史上中長期的な戦略を以って一勢力を築き上げた人というのはそのほとんどが局地的な戦術にも通ずる、言い換えるなら戦場での「小手先のテクニック」を操る事もできたように思う。

…だからと言ってそういう人たちが「小手先のテクニック」を多用していたかと言えば「NO」だろう。織田信長なんかはそういうイメージで(勘や思い付きで作戦を立てているように)見られる事が多いが、彼に関する文献(あまりに荒唐無稽なものは除く)を読む限り同時代に生きた他の誰よりも戦略を、つまり「自分が有利な状態で戦える状況」を(時に年単位の時間をかけて)構築する事を重視していたようである(というかそうでないと連戦連勝などできるわけがない)。他の「覇者」も同様だろう。

 

ではその「逆」はどうか。つまり「戦術に通ずる者は戦略にも通ずる」のか。言い換えるなら「小手先のテクニックを得意とする人が中長期的な展望を構築する」事はできる(得意な)のか。…数学の命題だと「『命題』とその『逆』の真偽は必ずとも一致するとは限らない」ので【*1】、それに倣うならば「戦略に通ずる者は戦術にも通ずる」が真であったとしても(多分真だろうけど)「戦術に通ずる者は戦略にも通ずる」も真だとは限らない、となるわけだが… 三国志を見ているとわかるが、戦術(≒用兵)に通ずる武将はたくさんいたが、その中で戦略にも通じていた人は非常に少ない。蜀だと実質諸葛亮だけだったし(早世した龐統・法正・馬良はどうだったのかはわからない)、呉についても以前も書いたが80年の歴史【*2】の中で「戦略家」と言える人は魯粛くらいしかいなかった(その前後に軍権を持っていた周瑜呂蒙などは戦略家とは言えなかった)ので、この論法は多分間違っていないと思う。

 

命題においては(最初の命題が真であれば)「対偶は真」である。…そういう話はとっくに忘れたという人は多そうなので簡単にまとめると、最初の命題を「AならばBである(戦略に通ずる者は戦術にも通ずる)」とすると

逆…BならばAである

⇒戦術に通ずる者は戦略にも通ずる

裏…AでなければBではない

⇒戦略に疎いものは戦術にも疎い

対偶…BでなければAではない

⇒戦術に疎いものは戦略にも疎い

…前述の例から逆は必ずしも真とは限らないし、「裏」も真とは限らない事は分かっている【*3】。一方で対偶は真になるので「戦術に疎いものは戦略にも疎い」は真になる。これを別の言い方をするなら「自分は戦術に通ずる事を証明できない人が戦略を論じても説得力がない」という事になる。

何だか自分がそれに当てはまっている(ように見られている)気がするので、何でもいいから「戦術にも通じている事を証明」しておこう、という気になった。…けど、一体何で証明したらいいのかなかなか思い浮かばない。…しばらく考えて思いついたのはこれだった。

 

以前「攻略評価でAを取るには最速・最短距離で進軍して何とかなるレベル」と書いた。だが単純に速度のみを考えてプレイを進めるとキャラが育たない(「経験評価」がランクダウンしてしまう)し、何より最終盤で大苦戦を強いられるので最終的に総ターン数が余計にかかるハメに──最悪な場合本来の意味通りの「詰み」に──なる。

実際のところは「最速」と言っても若干の余裕があるので、その余裕を利用して味方のレベルを可能な限り上げる(経験評価をAにする)必要がある。そのあたりをどのように折り合いをつけるか、そして「どこでどのように(短期間で効率良く)」自軍を強くするか、というのがこのゲームで要求される「戦術」である【*4】。もしこれが最近のゲームでよく見られる「NEW GAME+」*5があったらこんなに苦労する事もないのだが、それでオールAクリアしても何の自慢にも証明にもならない(笑)。

最初は様々なカップリング【*6】を楽しんでいたが、次第に速度を重視する…というか「無駄を省く」方針のプレイになり【*7】、それまでのプレイで集めた情報から極限まで(?)無駄を省いた行動を構築する。情報がなければ戦術を構築するのは不可能なので【*8】。そしてこれらの情報を基に「逆算」する事で「育成に回せるターン数」を算出し、それに則ってそれぞれの章を進行していく事になる。言うまでもないが具体的な攻略法をどこぞの攻略サイトとかを参照したのでは(戦術に通ずる事の証明にならないので)全く意味がない。

 

…この手の戦術は「100%そうなる」という確証がない場合を除いて「ある程度余力を残してゴールする」ように立てるのが兵法のセオリーである。最初から最後までギリギリのラインを攻める前提のプランは何かハプニングがあったら即ご破算なので不採用*9よって自分も「10ターン残し(リミットは『399ターン以内』なので大体『390ターン』)でゴールする」という前提で逆算。最初はレベルの方に不安があったが、「ターン数はともかく味方の成長は挽回する手立てがないわけではない」と随分楽観的(笑)。…実際終わってみるとターン数は377ターン(当初の見込みを10ターン以上も短縮しているではないか)、味方の合計レベルも下限+40レベルくらいで収まって(何とかなって)いた。しかも「村や民は全て救出する」という条件(以前も書いたが彼等を見殺しにしても評価には影響しないし、実際その可能性も考えていた)も満たした上でのオールA。

…これが名将の兵法なんだよ!

というのは言い過ぎ(笑)。とりあえず12月3日までに終えれたのは良かった(言うまでもなく某編集部に対する痛烈な皮肉)。

 

…ただ実際にやってみた感想は

「これは戦術とか兵法とか言うより『トリックプレー』だよな」

例えば敵の命中率が0(つまりこちらは絶対ダメージを受けない)である事をわかっての猪突は立派な(?)戦術だが、聖戦の系譜では「次にくる乱数が決まっている」ので、その乱数を先読みして【*10】いい結果になるように行動する、という事ができてしまう。ハッキリ言ってこんなのは戦術でも何でもない。しかしオールAを取ろうとするとそういった事(乱数調整とでも呼ぶべきか)を使わないと非常に困難である(ぶっちゃけ「不可能」と断言できるレベルかも知れない)。それどころかFEシリーズは「章の開始から数ターンで勝負が決まる」というシチュエーションが多いゲームなので、オールA狙いでなくても乱数頼みになってしまうケースが少なくない、と来たもんだ。「ゲーム」としては面白いのかも知れない(個人的にはゲームであってもあまり面白いとは思わない)が「実際の戦争」だったら笑い話にもならない(そんな状況を作り出した上層部の無能っぷりを恨むしかない)

ちなみにオールAでクリアする事による特典のようなものはないっぽい。一応真のエンディングらしきもの(追加のカットが数秒あるだけ…)はあるが、それを見るための条件は「総合評価がA」であり、4項目のうちどれか1つがBでもその条件は満たせる(Bが2つやCがあったらB止まり)ので、真のエンディングを見るだけだったらオールAにこだわる必要は皆無。ここは最も難易度が高い攻略評価をBでクリアする事(Aと比して150ターンの猶予有)を目指せば妙なトリックプレーに走らなくてもいいので幾分は「戦術してる」気分にはなるし、そもそも「全体の難易度が全然違う*11」。

 

ちなみにこの聖戦の系譜では「次にくる乱数が決まっている」事を逆用して

ゲーム開始からの行動を全て指定すれば誰がプレイしても同じ結果になる(オールAが取れる)

という芸当ができてしまう(他にも同じような事ができてしまうシリーズもあるらしいが…)この遊び方及びその手順の事をファンの間では「詰エムブレム」と呼ぶらしく、しかもその「詰め手順」を記した本まで出ていたとか。もっともその「手数」は大雑把な計算(所要ターン数×味方の人数+α)でも「およそ10万手くらい」になるし(その中には「意図的に乱数を進めるために『闘技場で故意に負ける』」なんて「手」も含まれる)、そもそも大前提として

(自分で発見した『詰め手順』ならともかく)そんな方法でクリアして何の意味があるんだ?

となる。詰キスト(詰パラ読者)だったら今月の詰パラ「短編コンクールを全問柿木で解いて解答を投稿する奴をどう思うか?」という問いの答えがそのまま「他力の詰エムブレムでクリアした人への感想」になると思う(のでそれ以上の説明は不要だろう)。

 

…このはてなブログはここ最近で「記事の有料販売」ができるようになったので、やろうと思えば聖戦の系譜「詰め手順」をそれで売る事もできるのだが、…当時ならともかく今更需要はない──あったとしても検索すれば無料の「詰め手順」が多分どこかに落ちている──だろうからこの企画は没。相応の金をもらえる事が「100%確実」だったらやるかも知れないけど…

*1:たまに聞く「逆もまた真なり」というのは一体いつ、誰が言い出したのだろう…

*2:便宜上孫策が江東に基盤を築いた200年くらいから呉が滅んだ280年までとする。

*3:「逆」と「裏」は「対偶の関係」なので真偽が一致する。

*4:「戦略」ではない。この場合の戦略は「総ターン数のリミットを増やす」などの有利な前提条件を構築する事である(喩えるなら「当初の予定から+100日分の食糧を確保する」ようなもので、それは戦術の範疇ではない。もっとも「戦術」シミュレーションゲームのFEシリーズでそれは不可能な話だが)。

*5:クリア時の一部データ(キャラのレベルや持ち物など)を引き継いで2周目以降をプレイできるモードの通称(ゲームによって名称は様々)。FEシリーズでも一部のシリーズでは採用されている模様(詳しい事は知らん)。ちなみに自分の記憶にある限りで同様の機能がある最古のゲームは同じ任天堂がリリースした「リンクの冒険」だと思う。

*6:誰と誰を恋人同士に(カップリング)するかで生まれる子供の能力に差が出る(基本は両親の能力や特徴を引き継ぐ)。魔法使い系のキャラの親が所謂「脳筋」だったりすると子供の魔力が伸び悩む、なんて事は普通に起きる。

*7:このゲームは「クリア回数でオープニングデモが増える」ので、どうせなら早く周回できる方がいい、という結論になる。ただしそれでも名将(?)の矜持として「村や民は全て救出する」「誰も死なせない」などは絶対条件。

*8:特に敵の行動AIに関して。一応「大原則のようなもの」に則った行動をするが、たまに場面特有の奇妙な行動を取る事があるし、FEシリーズは概して「突然別方面から敵が出てくる」事が多いゲームなので先回りするためにも情報は必須である。

*9:ただ聖戦の系譜を含む一部の作品に関しては「それができてしまう」。詳しくは後述。

*10:特にSwitchだと「巻き戻し」で簡単に?乱数の先読みができてしまう。オリジナルでも「毎ターンの開始時にセーブできる」のでそこからトライ&エラーは比較的容易にできてしまう。他のシリーズはほとんどが「章の初めでしかセーブできない(一時中断用の簡易セーブはあるけど)」のでこのような芸当や所謂「リセマラ」なんかは基本的に不可能。

*11:より安全で確実な戦術を取れるし、味方を強化する時間が確保できるので前述の「章の開始から数ターン」が運ゲーになる可能性が下がる。もっとも序盤(3章くらいまで)は「味方を強化できるスポットがない」のであまり影響がないのだが。