ゲームというのは大抵の場合「製作者サイドが想定したクリア手順」が存在する。ゲームによってはある程度の融通が利く場合もあるが、そういうゲームでも例えば「A地点のイベントをクリアしないとB地点に進めない」といった「大筋」は存在する。詰将棋だと「作意」と同義と言えよう。
ところが時に「製作者サイドが想定していなかったクリア手順(というか抜け穴)」があったりする。パズルゲームでよく見られる(見られた)話で、本来なら使い切っているべきアイテムが余ってクリアできてしまう、言うなれば「余詰」とでも言うべきものが見受けられた。
…ステージ単位の「余詰」だったら大した問題にならない(それを発見したプレイヤーの自己満足で終わる)のだが、ゲーム全体の「余詰」となると話は変わってくる。例えば前回の記事のネタとなった「エッガーランド」、その「初代【*1】」にもゲーム全体の進行に影響する「余詰」があった。
大雑把に説明すると【*2】、このゲームはスタート地点(下図の「S」)から各ステージをクリアしてゴール地点(下図の「G」)を目指すのだが、そのための「最短ルート」は下図の青線のルートを通らないといけない。これ以外にも道はたくさんあるが、このルート以外では「進んだ先のステージが解けない」作りになっている。例えば最初のステージ(「S」)をクリアすると上と右に扉が開くが(下図の細い線で区切られたエリアは全てそういう意味)、右に進んでも「進んだ先のステージが解けない」(つまりそのステージは「上から入らないと解けない」)。正規ルート(?)でクリアした後なら一部を除いて往復可能になる。
…という「作意」のはずなのだが、図の右下にある黄色地のステージに「余詰」があった(他にも「余詰」のあるステージはいくつかあった記憶が)。このステージは図を見ても分かるようにマップ全体を大きく回って「下から入って」解くのが「作意」で、序盤早々に「左から入る」事はできるがクリアできない、つまり「偽作意」という意図だったと思う。
…ところが、このステージは「左から入っても解けてしまう」という「余詰」があった【*3】。ここを「余詰」でクリアできてしまう事で「ゴールまでの最短ルート」が大きく変わってしまう=「解かなくてもいいステージ(水色地)」が多数できてしまう。こうなると「ゲーム全体の余詰」になってしまうのでどう考えても「製作者サイドの作意」とは思えない。…もっともこのゲームでは「ゴールの先(にもまだステージが続く)で必要なアイテム」を集めるために最短ルート以外の(マップ上部などの緑地の)ステージもクリアする必要があるので、結局は正規ルートもクリアしないといけないのだが(笑)。
…これも相当大きな「キズ」である【*4】が、他のゲームだと「余詰でクリアするとその先でハマる」なんて事もあった。ざっくりと説明すると「A地点をクリアするにはアイテムXを入手する必要がある」という作意に対し「アイテムXを入手せずにA地点をクリアできてしまう」という「余詰」があり、そして「A地点の先にあるB地点でもアイテムXが必要になる」、しかしその「アイテムXを持っていない」のでクリアできない(しかも「戻って取りに行く事ができない」)、つまり「ハマり」である【*5】。
そういった不具合をなくすためにゲーム作成には「デバッグ」と呼ばれる作業が存在する。ゲームの規模によっては100人単位のチームになり(故に最近は「デバッグは外部に委託する」事の方が多い)、文字通り「人海戦術」で不具合の洗い出しにかかる。映像や音声の乱れ、ゲーム進行上の問題(フリーズとか)などは無論の事、プレイに一定の条件(例えば「○○を使用してはいけない」とか「毎回△△してから次に進む」とか、要は「縛りプレイ」に近いもの)を加えてそれが進行に影響を及ぼさないか、なんてのもチェックする。…そういう作業によって大小様々の不具合が修正されるわけだが、それでもたまにバグや「余詰」が残ってしまう事はある。もっとも今のゲーム機は「オンラインアップデート」でその不具合を後から修正できるのでいい世の中(?)だなぁ、とは思う【*6】。
自分もその仕事に携わった事があるが【*7】、その経験から感じたことは
という事。実際新シリーズのリリース直後には「ちゃんとデバッグ(テストプレイ)していれば起きるわけがない」というレベルの不具合がほぼ毎回発生しているので。
…多分その某メーカーは「デバッグを自社内の小規模人数でしかやっていない」のではないか(現在のゲーム内容や規模を考えたらそれこそ「100人単位のチーム」でないとまともなデバッグにならない)、と思う。ゲームに採用する「楽曲」は外部発注が多いくせに何故デバッグは外部に発注しないのか。
これは完全な憶説だが(そもそも「デバッグをまともにやっていない」の時点で憶説だが…)、その某メーカーは「ゲーム内容の流出を恐れている(ので外部にデバッグを委託しようとしない)」のではないか、と思う。特に有名な「ブランド」だとその可能性(というか「危険性」)は格段に高まるわけで【*8】、その某メーカーのゲームも過去に情報流出を思わせる「事件」があった事が「デバッグの外部委託を忌避」する要因なのかも知れない。
…現実はリリース後に全国のプレイヤーが「デバッガー」代わりにプレイしている(それらの声を基に修正をかけている)ようなもので、それで一応「やっていけている」のだが、それって言い換えると「胡坐をかきまくっている」、要は「プレイヤーを馬鹿にしている」と言う事に他ならないように思う。
*1:ファミコン・ディスクシステムでリリースされたシリーズ。厳密に言うとそれ以前にMSX版が存在するので「初代」ではないのだが、知名度的にはファミコン版の1作目が「初代」と呼ばれる事が多い。
*2:下図は「当時自作した地図」が奇跡的に残っていたのでそれを利用。…というより「地図」しか残っていないのであまり詳しく説明できないし、この地図がどれだけ正確かも保障できない(笑)。
*3:どういうステージでどういう「余詰」があったかはうろ覚えだが、「本来なら使い切るべきアイテムを余してクリアできてしまう」という事は覚えている。
*4:ちなみにこの経験があったからかは分からないが続編の「迷宮の復活」では無駄な分かれ道はなくなったし、パズル自体も洗練されて(?)余詰はほとんどなかった。
*5:一般的には「詰み」という用語が使われる事が多いが、詰キストだったら「こういう進行不能状態を『詰み』と言うのは明らかにおかしい」と思うはずです(笑)。
*6:一方でファミコン時代には意図的に「ハマる」仕掛け(詰将棋だと「紛れ」と同義)を盛り込んだゲームもあったな、と思う。某「挑戦状」とか…
*7:何のデバッグに携わったのかは「守秘義務」があるのでネット上では絶対に書けません。
*8:最近だと「ファイナルファンタジーⅦリメイク」の未公開情報がデバッグから流出したとかしないとか、という騒動があった事を小耳にはさんだ。