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それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

「諸葛亮」か「孔明」か

年始あたりから「真・三國無双8 Empires(エンパイアーズ)で時間を過ごす事が多い(FEとifは一区切り)。三国志の登場人物を主役としたアクションゲームで(「Empires」はそれに「三國志」のような政略要素を組み込んだ中国統一を目指すシリーズ)、所謂「1人だけ敵なしの状態」という意味で使われる「無双」という言葉を定着させたゲームと言える(厳密に言うと初代の「三國無双」は1vs1の対戦格闘ゲームだったので、この言葉を定着させたのは次作の「真・三國無双」というのが正確だと思う)。

…知らない人の為に一応書いておくと、光栄(現:コーエーテクモゲームス)の三国志を題材としたゲームは三國志」「三國無双と「國」の字を使うのが正しい(「国」を使っている場合は「國」の字を使えない環境or誤植)また海外では「Dynasty Warriors」という名称になっているが、「真・三國無双」が「Dynasty Warriors 2」という扱いで以降もナンバリングが日本とは1つずつズレている(つまり「真・三國無双8」は「Dynasty Warriors 9」)。

 

自分は過去のいくつかのシリーズをプレイした事はあるが、兎にも角にも

諸葛亮がビームを撃つ」という設定を考えた人間はゲーム史上に残る天才だ

…という考えは今も昔も変わっていない。初出は初代の「三國無双」で、当時は「ガード不能(威力も大きいがその分技の隙も大きい)」。…確か「鉄拳」にも同じような事をする奴がいた(初出は「鉄拳」の方が先だったと思う)が、諸葛亮は「真・三國無双」になってからもビームを撃ちまくる(途中から撃たなくなったらしい→今は雷を操る)。後に司馬懿のような他の軍師系キャラもビームを撃つようになった

…確かに三国志演義に出てくる諸葛亮「人間とは思えない」と思える箇所がある。その最たるものは赤壁の戦いで「祈祷で風向きを変えた」事だろう。他にも「饅頭を作って川の氾濫を止めた」なんてのも人間技ではない。こんな事をするのはほとんど「妖術師の範疇」と言ってよく、彼と比べたら藤井聡太が「普通の人間」に見えてしまう(笑)。おそらくはそこから派生(?)して生まれた技なのかも知れないが、普通に(?)考えると諸葛亮は火計をよく用いているので「火を使う技」になると思う。それが「ビーム」である。…この発想を天才と言わずに何と言うのだろう、と思った。

 

…ところでこの渦中(?)の人物、諸葛亮と呼ばれる事もあれば孔明(あるいは諸葛孔明)」と呼ばれる事もある。他の登場人物はほぼほぼ姓名で呼ばれる中(例えば「劉備」「曹操」など。彼等を「(劉)玄徳」「(曹)孟徳」と呼ぶ人はあまり見かけない)、何故彼だけが字で呼ばれる、しかも姓名呼びと並立しているのか。「名前が長いから」とかいう理由も説得力がなくもないが、これについては

諸葛亮」と呼ぶ人…ゲーム(「三國志」「三國無双」シリーズなど)から三国志の世界に入った人

「(諸葛)孔明」と呼ぶ人…物語三国志演義吉川英治三国志横山光輝三国志、など)から三国志の世界に入った人

という区分でほぼ間違いがないと思う。…というのは、物語の三国志ではほぼ全篇を通して「孔明」という呼称で統一されている(「諸葛亮」という表記がほとんど出てこない)から。だから後者の人にとって彼は「孔明なのである。一方でゲームだと彼の呼称は「諸葛亮なので(固有イベント内で「孔明」が出てくることはあるにせよ)、前者の人のほとんどは彼の事を(名前が長くても)「諸葛亮と呼んでいる。…自分もこちら。

 

…では何故彼だけが「孔明」と字で呼ばれるのか? これは

三国志演義の作者である羅貫中が熱烈な諸葛亮の崇拝者だったから

以外の理由が考えられない。以前も書いたが昔の中国は「名を呼ぶのは失礼にあたる」ので、

熱烈な崇拝者(である羅貫中)が彼の事を諸葛「亮」などと呼べるわけがない

のである(他の登場人物は普通に姓名で書かれている)。そして三国志を日本に定着させた(と言える)吉川三国志、横山三国志ともに三国志演義をベースにしているせいで、彼の呼称もそれに倣ってほぼ全篇「孔明」で通されている(最近は「正史ベース」にした三国志も多く出ており、そちらだと忖度?なく「諸葛亮」となっているものもある)故に日本でも彼を「孔明」と呼ぶ人が一定数いるのである。…という理論で間違いはないはず。

 

諸葛亮という人物(あるいは三国のうちの蜀)は昔から人気があるし、諸葛亮という人物は中国史上においても有数の有名・人気・偉大な人物と評されている。なので羅貫中諸葛亮が好きであってもなんら不思議ではないが、それを差し引いたとしても(前述のような)三国志演義に出てくる諸葛亮は「常軌を逸している」としか思えない要素があまりに多い。これが完全なフィクションだったら彼が無双していようと知った事ではないが、実在の人物を誇張や虚構(大半は後者)で塗り固めてしまうというのはどうなのか(前述の「饅頭」の話もそうだが、演義には「後世の人間の言動・功績を諸葛亮の功績にすり替えたもの」が多いそして本人だけならともかく諸葛亮の存在・功績を際立たせるために

孔明様(無論皮肉)に楯突いた人間の人格・能力を貶めている

というのは最早「正気の沙汰ではない」*1】。これらの「罪状」を列挙したらそれこそ「本が1冊書けそうな勢い」であり(同じ事を考えている人はいるはずなので検索すれば見つかるかも?)、そこから羅貫中=熱烈な諸葛亮信者」という図式が出来上がるのである(ついでに言うと演義では劉備関羽諸葛亮ほどではないにせよ美化して描かれている…彼等もほぼ全篇通して「玄徳」「雲長」と字で表記)。もっとも孔明様絶対主義」にしようとした結果逆に諸葛亮(や劉備)が悪人のようになっているシーンもあるのだが…(書くと長くなるので割愛)

 

…まぁそんな事をいちいち気にしていたらゲームにならないので(笑)、このゲームはこのゲームとして楽しむのが一番健全だと思う。ちなみに以前も書いたように自分は

ゲームの世界でも「勝ち易きに勝つ」が信条

なので、勝算のない(あるいは少ない)戦を仕掛けて策やテクニックで切り抜ける、といった「愚将の戦」は管轄外(世の中にはそういうプレイが好きそうな人が多そうだけど)。…もっともこのゲームは「PCの地位」によっては「戦略・政略に関与する事ができない」ので「勝算のない戦いに無理矢理駆り出される」事もあるのだが(笑)。

今作の無双武将(固有のグラフィックとボイスがある)は94人*2】。三國無双」の登場人物は13人*3だったので、実に7倍強。ゲームの進化が感じられる数字でもあるが、「13人」は当時から外見とかが大きく変わっていない(他の武将も「初出時の特徴でずっと来ている」のがほとんど。中には初出時から大きくイメチェン?している人もいるが)のも興味深い。

 

…と書いたものの、(以前も書いたが)自分は「そんな事をいちいち気にしていたらゲームにならない」事でも、「フィクションの設定が事実であるかのように誤認させている」コンテンツを手放しで称賛できるほど心が広くない(笑)。特に諸葛亮の場合当人よりも「人格を捻じ曲げられた人達(の関係者や子孫)」が不憫で仕方ない(世が世なら名誉棄損とかで訴えられている?)ように思う。実際はどうだったのか知る方法がない事*4は仕方ないとしても、それを割り引いても羅貫中の「罪」の大きさは並大抵ではないのではないか、と思いながら今日もゲームをプレイしているのは

理論的に間違っている事を事実のように描写して素人を騙している某ラノベよりはマシだろう

と思ったからかも知れない(笑)。

*1:代表的なのは呉の周瑜魯粛、他には魏の曹真や「同じ蜀の陣営に属した」魏延などもその対象と言える。一方で「悪」のイメージが強い人物でも董卓などの「諸葛亮との接点がない人物」は比較的公平に(それこそ「董卓より魏延の方が悪人である」ように)書かれている。

*2:「8」ではうち4人がDLCコンテンツ⇒「8empires」ではデフォルトで全員使用可。また「8Empires」のDLC武将は「三国志の登場人物ではない」。

*3:趙雲関羽張飛夏侯惇典韋、許褚、周瑜陸遜太史慈貂蝉諸葛亮曹操呂布孫尚香も登場するが周瑜のコンパチ(元キャラの外見とボイスを変えただけの隠しキャラ)だったのでここでは含めないものとする。

*4:例えば「諸葛亮の妻の名前」。地元の名士黄承彦の娘で今日では「(黄)月英」という字で浸透しているが、実際の字はわかっていない(史書に記載が見当たらない=誰かが考えた「月英」という名前が今日に浸透していることになる)。真・三國無双8から登場の「夏侯姫」(張飛の妻で夏侯淵の姪にあたる)なども同様だと思われる。