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他人に完璧を要求するのは質の悪い潔癖症のようなものだ。

三国志を正史の視点で・4

三国志の事実上のスタート地点と言える黄巾の乱が起こったのは184年。その時代の漢の皇帝は12代目の「霊帝(156?~189、在位期間168~189)であった。この頃(というか後漢の時代の大半)外戚と宦官の権力争いが盛んであったが、即位の直前と直後に起きた党錮の禁(166、169)によって反宦官派が一掃された【*1】事で三国志の冒頭でも語られる「宦官に因る腐敗政治」の時代となっていた。

 

霊帝は世の中がおかしい事に全く気付かなかったのか?」

と怒りたくもなるが、即位当時の霊帝は12歳くらい【*2】、しかも元々は地方で暮らす皇族だったのが先代(桓帝)の急逝で急遽擁立された、という経緯なので言ってみれば「世間知らず」。宦官はそこに付け込み、世が乱れに乱れている(その原因の90%以上はその宦官が作った、と言っても過言ではない)にも関わらず

「陛下の御威光で今日も天下は泰平です」

と騙し続けててめぇらは私利私欲に走り(というか「溺れ」)まくっている。

そういった個人の力ではどうにもならない(?)事情はあったものの、そういう事を抜きにした本人の才覚はどうだったかと言うと「宮殿内で『お店屋さんごっこ』に興じていた」という記録があるので、早い話「アホだった」と言っても過言ではない。

もう一つ霊帝がアホであった事を証明できる(?)事に「売官制」の実施というのがある。…いつの世でも地位や官職を得るために金をばら撒くアホは絶滅しないが、霊帝「官職を金で売買する事を法的に認める」という事をやらかしている。もっとも売官自体はこの時代以外にも(それこそ日本でも)行われていたが、霊帝の場合政治の3トップである「三公*3」をも売官の対象としたあたりやはり「アホ」だと思う。何と言っても「欲の化け物と化した宦官に政治を放り投げて遊興に身を投じていた」人間だったら「他にやるべき事があった」はずなのだから… ちなみに売官で三公の地位を買った人間の一人に曹操の父である曹嵩がいる【*4】。

 

当時の中国の事情や古今東西を問わず、「金で地位・権力を買った人間が『まっとうな政治をする』可能性」はどれだけあるだろうか。別の言い方をするなら「私財を投げ打ってでも庶民の生活の改善に砕身しようとする高潔な人」は一体何人いるだろうか。

まぁ普通に考えれば「そんな酔狂な人はまずいない」。0ではないとは思うが、そのほとんどは

「民衆の生活」なんかよりも「自分がその地位を得るために使った金を取り戻す事(そしてそれ以上稼ぐ事)」しか考えない

に決まっている。

 

奇しくも(?)今の日本は参議院選挙の公示期間。耳障りでしかない選挙運動を聞きながらこの記事を書いているわけだが、こういう記事を書きながらだと「今の議員の中にもそんな輩は多いんだろうな」、と思わざるを得ない。

詳しい事は知らないが、日本の選挙というのは「何だかんだでやたらと金がかかっている」ように見える。そして「報酬が高い(確か年額で『2180万円』だったっけ?)上に「役得(政治献金とか議員特権とか)がある」とあっちゃあ「高い金を払ってでも選挙に出たがる人」がいても不思議ではないな、と思って(呆れて?)しまう【*5】。それこそ行われているのは選挙の皮を被った「議席のオークション(ただし落札できなかった場合でも入札金は帰ってこない)」ではないか、とすら思ってしまう(実際には費やした費用の多寡で当落が決まるわけではないだろうけど)。

 

…この国の「惨状」を解決しようとするならそれこそ「大金を投入してでも議員になりたくなるようなシステム(高給とか特権とか)を改善するところから始めないとダメなのかも知れない。ただしそれを「民主制的なやり方」で改善しようとすると最低でも50年くらいはかかりそう(それ以前に「特権にしがみつくハイエナどもの妨害」によって永遠に実現しない可能性が高い)し、君主制的なやり方」ならそれこそ1年かからない可能性もあるが「別の理由(以前の記事を参照)」で推奨できない。自民党が灰燼に帰すような出来事でもあればまた違うのかも知れないが、ついこの前も自民党をぶっ壊す!」とか大言を吐いた輩がいた割には全然ぶっ壊れていないように思うし

*1:字面から勘違いされやすいが、この時反宦官派は「追放された」のがほとんどで、本当に投獄された人はほとんどいなかったようだ。

*2:後漢の歴代皇帝の中では「これでも年長の部類」で、三国志の時代の「献帝」は即位時9歳だったし、霊帝以前には「満1歳未満」で即位した(というか「させられた」)上に1年未満で暗殺された皇帝もいたほど。

*3:太尉(軍事)・司徒(行政)・司空(土木)。司徒、司空の担当は史料によって異なる事もある。

*4:太尉を「一億銭」で買った、とされる。「銭」が今の貨幣価値でどれほどなのかはよく分からないが、同じ三公の地位を「500万銭」で買った人もいたのでトンデモナイ金額なのは想像できる。

*5:もっとも選挙資金のほとんどは本人ではなく「後援者」が出しているので「本人の懐は大して痛まない」のだろうけど…