自分が車を運転していた時のモットーは
「路線バスとホンダ車には優しく」
であった。後者は完全なエゴであるが(笑)、前者への妨害は利用している多くの客が迷惑を被る(時間を奪われる)わけだから譲ってあげるのが人の道だろう、なんて偉そうな事を考えながら。例えばバス停に止まっているバスが右ウインカーを出していたらこちらは減速してバスに出てってもらうとか、特に地元だと「バス会社の人より詳しいんじゃないか?」というレベルでバス路線を把握していたりするので、数百メートル先にいる対向車線のバスを見て「あ、あのバス次の交差点を右に曲がるな」と察知してスピードを緩め、こちらが交差点に着く前にバスに右折してもらう、なんて高等テクニック(?)を使ったりもしていた。
これらは「自分がそうしたいからそうしてきた」わけなのだが、実はそうではなかった、という事を最近になって知った。
答えから書くと、前述のうち「バス停に止まっているバスが右ウインカーを出していたらこちらは減速してバスに出てってもらう」というのは善意とかいう話ではなく、道路交通法でそうしないといけない、とハッキリ明記されている。道路交通法第31条第2項に「乗合自動車の発進の保護」というのがあり、
停留所において乗客の乗降のため停車していた乗合自動車が発進するため進路を変更しようとして手又は方向指示器により合図をした場合においては、その後方にある車両は、その速度又は方向を急に変更しなければならないこととなる場合を除き、当該合図をした乗合自動車の進路の変更を妨げてはならない。
…教習所で習った記憶も座学の時間に居眠りをしていた記憶もないのだが(笑)、それはひとまず置いておこう。今も昔もこれを守っている人なんてなかなか見かけない(文言の後半にあるように「急ブレーキや急ハンドルをしてまで」譲る必要はないのだが)。当時は「この国には思いやりの精神を持っている奴はいないのか」とか思っていたが、今はそれに加えて「この国には道交法を守れる奴はいないのか」なんて事を思いながらバス通勤をしていたりする。ちなみに上項の違反者は5万円以下の罰金だそうだ(これを本格的に取り締まったら結構な罰金がたまるんちゃうか?とか思ったり)。
そんなわけで世の中には「あまり知られていない優先順位」なんてものが結構あったりする。例えばボートレースで事故があった時の優先順位とか。これは事故が発生した地点の直前の中間線(1マークと2マークの中間点、つまり「スリットラインとその延長線上のバックストレッチ中間点」をここでは便宜上そう呼ぶ事にする)を先に通過した艇が優先。…これは何となくわかるが問題は中間線で複数の艇が並走している場合で、その場合舳先が少しでもかかっている場合は内側の艇が(外側の艇より後方であっても)優先される。
この優先順位を守らなかった場合「優先艇保護違反」となり一発で賞典除外(不良航法や待機行動違反は1節間に2回で賞典除外)。なかなか見かけない違反なので詳細を知らないというファンも少なくないのではなかろうか(自分も結構長い間仕組みを知らなかった、というか今でも上記であっているという自信があまりない。違っていたらゴメンナサイ…)。そのレースを走っているレーサーも明らかな並走はともかく「舳先がちょっとかかっているか否か」は自身での判断が難しいと思う(それどころか上から見ている審判でも判定が微妙な場合があるようだ)。
ではボウリングだと? 隣接するレーンで2人同時にアプローチに上がる、という事はいくらでもある。こういう時は基本的に「右側のレーンが優先」。無論右側の人が譲った場合はその限りではないが、公式戦などのアメリカンスタイル【*1】でも第1投球者の第1フレームは右側のレーンである(第2投球者は第1フレームが左側、以下同様)。…何故右なのかは知らない(笑)。
これはあくまで「同時に」の場合であって、明らかに時差がある時は常識的に考えても「先にアプローチに上がった方」に優先順位がある。…のだが、センターに行くとそんなのお構いなしとばかりに「隣のレーンで構えたボウラーを追い越して」投げる奴の何と多い事か【*2】。
隣接するレーンで複数のボウラーが並走(や追い越し)をするのはマナーやルールの以前に「非常に危険」である。言うまでもなく「衝突する危険があるから」【*3】。中には「まっすぐ進んでいるなら問題ないだろ」などと宣う奴がいるかも知れないが、上手い人でも「投球後にバランスを崩して隣のレーンにはみ出す」という事は普通に起きうる(そして先ほどの戯言を言う奴に限ってフォームがおかしいので投球後にバランスを崩したりする)し、それ以前に10ピンカバーは「対角線のラインで投げる」からアプローチの左一杯(個人差はあるが平均すると左のガターの延長線上くらい?)まで寄って投球するので割り込みや追い越しは普通に邪魔かつ危険である。そしてもっと酷い奴になると「投球後平然と隣のレーンを通って戻ってくる」。もしその時にそのレーンのボウラーが投球動作に入っていたら…
自分はそういう奴等にぶつかりそうになった事が何度かある。そういう時の自分は大抵呆れて&諦めていて、奴らの「間」を狙って投げるという「自己防衛スタイル(?)」で投球を続けるのだが、過去に一度ブチ切れた事がある。詳細は省く(というかあまり細かく覚えていない)が、要は「このまま続けていたら事故が起きる可能性が高い」と思ったからやむなく(?)ブチ切れた。例えばこちらがボールを「振り子スイング」でリリースする時に突然前方に飛び出されたら「15ポンド(約6.8kg)のボールで相手を殴りつける」状態になってしまう(勢いがついているので止めるのは難しい)。あんな重くて硬いもの【*4】で「殴られ」たらハッキリ言って「痛い」で済むレベルではなく、下手すりゃ骨折レベルである(「振り子スイング」がぶつかるとしたら高さ的に膝~脛のあたりだろう)。またぶつかった弾みで落としたボールが足の甲にでも落ちたらやはり骨折必至である(安全靴の性能を備えたボウリングシューズ、というのは自分は聞いたことがない)。…ボウリングで大怪我なんて笑い話にもならないし、何より誰も幸せになれない【*5】。なので社会における優先順位というのは我々が考える以上に(事故を防ぐという意味で)大事、というか「世間では軽く捉えられ過ぎている」のではないか、と考えさせられた最近の話。
最近は「体罰=悪」と無条件に、かつ上から目線で決めつける風潮が非常に強いが、
「不注意が怪我や死に繋がる可能性がある場合」については「教育的暴力」をある程度は認めるというか推進してもいい
と思う(そう思わせるシーンを何度も見てきた)。極端な話、上記の例で言えば「膝を骨折するよりは一発ぶん殴られる方がはるかにダメージが少ない」わけでもあるし(前述の「ブチ切れた」時に相手を殴ったりはしていないのであしからず)。たびたびボートレーサー養成所(旧:やまと学校)の厳しさ(時に体罰)がクローズアップされるが、あれだって教官(ほとんどは元レーサー)が「ボートレースは一歩間違えば死につながる競技」である(実際今でも2~3年くらいに1人の割合で殉職者が出ている)事をわかっているから「選手の身を守る(守らせる)」ためにはあれくらい厳しく教育しないとダメなんだ、という想いからきている、くらいの想像はできる。
…勘違いする奴がいそうなのであらかじめ断っておくが、こういった主張をする自分でも「教育的ではない暴力」に関しては1μたりとも容認する気はないし、「失敗と死が直結しない事への指導(例えば一般的なスポーツの指導とか進学とか。正常であれば試合に負けたとか入試に失敗した=即死亡、なんてあるわけないでしょう)」に教育的暴力を振るうのも単なるアホだと思っているので誤解なきよう。…とは言え「教育的暴力」なんて概念はそれを自分(指導する側)の都合のいいように解釈する奴が絶対出てくるだろうから扱いは非常に難しいだろうなぁ。
…今日も見事に「優先順位」の話から「教育的暴力」に話が脱線した。…多分調子がいいのだろう(笑)。
*1:左右のレーンを交互に使って1ゲーム10フレームを投げる方式。反対に1つのレーンで1ゲーム投げ切るのは「ヨーロピアンスタイル」。
*2:もしかしたら「右側優先」というのを都合よく解釈して割り込んで来る奴もいるのかも知れないが、…まぁそういう奴等はその手のルール(というかマナー)は九分九厘知らんだろうな(笑)。そもそも左側でもバンバン追い越しかけてくるし。
*3:レーンを暗くして「全ボウラーに一斉に投げさせる」イベントを行っている某チェーン店は一体何を考えているのだろう、と思う事が度々ある。
*4:カタログを見るとマイボールに選ばれるウレタン系のボールの「硬度」はその多くが73~75くらい(スペアのためのポリエステル系のボールは85~90くらい、測定方法及び単位はおそらく「ショア硬度」)となっている。日常生活で喩えられるものだと「自動車のタイヤのゴム(65くらい)」とか「ゴルフボール(90くらい)とかが近いかも?。
*5:落ち度は100%向こうにあるのにこちらに賠償責任を押し付けられる可能性が50%以上はあるし、それこそセンター側も管理責任を問われる(何らかの賠償を負わされる)かも知れない。下手をすると悪意ある報道によってボウリングそのものが悪であるという印象操作をされかねない。