競走馬がレース中に病死、という話はたまに聞くが【*1】今日の話はそっちの話ではない。
徳島県のカートコースで死亡事故が発生した、というニュースをネットで見た時に
「…また?」
と思った。…カートが絡む死亡事故に対してではなく、「ゴーカート」と表現するアホなマスコミに対して。
報道内容によると4日のレース中、走行中のカートがコースを外れタイヤバリアに衝突、運転していた50代の男性はその後病院に搬送されたがおよそ1時間半後に死亡が確認された、との事だが、
「衝突の直前、カートの速度は10㎞/hくらい、運転していた男性は力が抜けたようにハンドルから手が放れていて、顔も上を向いた状態だった」
という目撃者の証言から、レース中に体調に異変が生じたようで、一部の記事では「死因は病死」と書かれている。
…一部の報道では「衝突による事故死」みたいに書かれているが、「10㎞/h前後の速度でタイヤバリアに衝突」した場合、死亡はおろかかすり傷すら負わない可能性の方がはるかに高い【*2】。ましてや今のカートには車両前方(と側面)に衝撃吸収のためのバンパー【*3】が付いているので、それこそ「10㎞/h前後だったらコンクリート壁に衝突しても死ぬのは難しい」。それを「カート=悪」と誤認させるような報道はもはや「悪意がある」としか思えないくらい。
最近は「運転中に意識を失った(かも知れない)」というニュースをよく聞く。20~30年前にはほとんど聞いた記憶がない。自分がカートをやっていた時も運転中に意識を失ったという話は聞いた事がない。真夏のレースで「レース中に脱水症状を起こした(コース脇にマシンを止めてその場に倒れ込んだ)」という話なら聞いた(というか自分が見ている前で起きた)事があるが(…これも一歩間違えば惨事になっていた可能性があるが)。
「業務での運転」だと最近は「過酷な労働条件(要は『過労』)」との因果関係を全否定できないが、カートに関しては「外的要因」がほとんど考えられない。もしかしたら亡くなられた方は仕事とかで過労や心労がたたっていた可能性もあるが、そんな事まで知る術はない(そもそもそんな状態でレースに出る余裕があるとも思えないし)。
ちなみにカートライセンスには「健康自認書」が付属しており、要は「自分はJAFが求める最小限度の健康状態を保っていますよ」と言う事を宣言したカード(下の画像)をレース参加時にライセンスそのものと一緒に主催者に呈示する必要がある。
字が小さいのでこの画像では何が書いてあるか分かりにくいが、以下の事が記載されている。専門用語はスルーしても問題ない(自分もよく分からない項目がある…)。
【健康管理事項】
日本国内において、カート競技に参加するドライバーの健康管理について、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が求める最小限度のものは、次の通りです。
なお国際格式競技の場合は、国際モータースポーツ競技規則付則L項(第2章)が適用されます。
➀矯正前または後の各視力が最低0.9であるか、一方の視力が0.8である場合、もう一方は1.0であること。
②対光反応は正常であり、現在眼圧上昇を伴う疾患、視野狭窄、調節障害のないこと。
③使用される信号旗の色の識別ができること。
④59歳以下のドライバー:ライセンス取得時は36か月以内に心電図を受けていること。
60歳以上のドライバー:ライセンス取得時は12か月以内に心電図と負荷心電図を受けていること。
その後、毎年心電図検査および2年ごとに負荷心電図検査と循環器専門医の診断を受けること。
⑤慢性疾患を有する場合は治療を行っていること。
高血圧症、腎障害、心障害(先天性心疾患含む)、糖尿病、肝臓障害、末梢閉塞症、動脈疾患、慢性閉塞性呼吸器疾患、神経障害など。
⑥両手の握り機能が損なわれていないこと。
⑦てんかん(過去10年間に症状が確認されていない場合を除く)、覚醒剤中毒、麻薬中毒、アルコール中毒の既往なく現に罹患していないこと。
⑧何らかの障がい者手帳を持つ場合は、競技会参加申込時にオーガナイザーへ申告すること。
⑨⑤、⑥、⑦に関連し、Condition欄に記載のあるライセンスを持つ場合は、その番号を以下の特記事項に記載し、またその番号に対応するJAFからの通知書をオーガナイザーに提示すること。
…おそらくは本人の気付かない間に何らかの(上記の⑤にある)疾患を患っていたのかも知れず、誠に不運だったと思う。
何はともあれ、亡くなられた方に対しここに哀悼の意を表します。