自分はレーシングカートの国際ライセンスを保有している。…レースにはもう10年以上出ていないので持っていても使い道は全くと言っていいほどないのだが、保有者はそんなに多くないものなので【*1】、言わば「ネタ」として毎年更新してきた。その国際ライセンス、2025年から更新には所定のレース出場実績が必要になった。つまり
国際ライセンスのペーパードライバー(?)が認められなくなる
のである。
カートライセンスのシステムは何度か変更されている。ごく最近だと2022年にそれまでは「国際A・B・C・リストリクテッド(制限付き)・ジュニア(14歳以下)」の区分が「国際E・F(14歳)・G(13歳以下)」に変更されている。つまりそれまでのABCがEの1つに一元化されたわけだが、JAFの資料によると「1995年までは『国際セニア』『国際ジュニア』の区分だった」ので、27年前の区分に戻ったようなものである。また国際ライセンスの更新も所定の出場実績がない場合(日本の場合)「国内A」まででしか更新申請できなかったのだが、いつの頃からか「国際Cに限っては出場実績なしでも更新申請ができる」ようになった、言うなれば「国際ライセンスのペーパードライバー」になる事ができた(ので自分はカートをやめた後でも「国際C」の更新を続けられた)わけだが、それも事実上昔の状態に戻る事になる。
前述のように「ネタ」とは言え日本人では500人くらいしか所有していないレアな(?)資格だった(勿論履歴書にも書いてきた)わけで、上記の通知を受けたときには
これがなくなったら今以上に『ただの人』なってしまう(「国内A」ではネタにもならない)
という悲壮感(?)に包まれたものである。JAFとしては「ライセンスを発給するほど赤字になるとは思えない【*2】」ので、「国際ライセンスのペーパードライバー」は(カートでなくても)むしろ歓迎すべき存在のように思えるが、国際ライセンスに関する要綱はCIK(国際カート委員会、要はカート競技の世界的元締め)が決めたものが世界共通のルールになるので、「余計な決定しやがって」とJAF(や他の国のカート競技を統括する団体)は思っているかも知れない。…そう言えば「資格とは金の亡者が金儲けのために作り出したもの」なんて事を言った人がいたような(…誰だっけ?)。
無論「所定の出場実績」を満たせば今後も国際ライセンスを所持する事はできるのだが、自分にはレースに出るための金も時間もないし、仮に両方あったとしても「体がついていけない」。中には40代~50代でも第一線で走っている人もたまにいるが【*3】、10年以上のブランクがある自分にそんな芸当はまず無理ですから。
カートをやっていたおかげで自分はモータースポーツの見方が「普通のファン」とはちょっと違うのかも知れない。例えば今のF1で行われている「スプリントレース」、土曜日に100kmほどの距離を走る決勝とは別のレースだが、カートの場合「予選もレース」が当たり前なので【*4】、「コース上での抜きにくさ」を除けば全く違和感を感じないし(もっともその「コース上での抜きにくさ」故に不評だったりするようだが)、一時問題になった「チームオーダー(エースドライバーにチームメイトが順位を譲る、とか)」も、ヨーロッパでは「チームオーダーはカートのチーム内にもある(言い換えるなら「レースの世界にはどのカテゴリーでも『ドライバーの序列』が空気のように存在する」)」という話を知っていた自分は「これがヨーロッパのやり方なんだよなぁ」と妙に納得しながら(半分以上は「呆れながら」)見ていたものである。
…とりあえず自分が「国際レーサー(?)」でいられるのは来年いっぱいまでのようである。自分は別に「資格マニア」ではないが、やっぱり何だか寂しいなぁ… もしかしたらまたライセンスの更新条件が変わる可能性もあるが、その頃にはおそらくライセンスを更新していない(「国内A」を持ち続けるつもりはない)だろうし、下手すりゃ生きていないかも知れないし(笑)。
*1:JAFの資料によると2022年のカート国際ライセンスの発給数(=保有者)はジュニアも含めて549人。
*2:国際Eの新規・更新料は年間8,400円、国内Aだと3,600円(どちらも税込)。事務手続きの手間に差がある(国際ライセンス所持者のリストをCIKに提出しないといけない、とか)かも知れないが、それでも「国際Eライセンスを申請してくれた方がJAFは儲かる」ように思われる。
*3:日本では「カートの神様」と呼ばれた李好彦という人が50歳くらいまで全日本の最上級クラスで走っていた記憶がある。ちなみにこの人はレーシングドライバー国本雄資の伯父にあたる。
*4:レースの規模にもよるが、国際レースだと予選のグリッドを決める「タイムトライアル(方式はよく変更される)」→「予選レースが3レース」→その総合成績を基に「準決勝」→「決勝」(シリーズ戦の場合「決勝1」→「決勝2」)、と1つの大会で「5レース」走る事が多い。