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それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

対局規定の変更はアマチュアの将棋にどれだけ影響があるか?

今年の10月1日付でプロ公式戦における対局規定の変更(同日より暫定施行)があった事を最近知った。

以下抜粋(自分が気になったところだけ)。

 

第6条 千日手持将棋、A.千日手 より
2.千日手が成立していた場合でも、両対局者が指し継いだ時点で千日手を打開したものとみなし、同一局面に戻らない限り、指し直しとはしない。

 

…つまり千日手成立局面まで遡って」千日手成立、とする事ができない。もっとも過去にそういう事例があったか定かでないし*1プロ棋士だったら同一局面2回目くらいから双方「これは千日手になるだろうな」と想定しながら指していると思うから千日手成立を見落とす事はそうそうないと思う【*2】。なお、同一局面が4回出現する前に双方の同意を持って千日手を成立させることは可能なので、そのあたりのバランスが微妙ではあるのだが…

もしこの規定が生きてくる(?)としたら「同一局面に至る手順が複数あった場合」、あるいは「同一局面3回目の局面から打開したしばらく後にもう一度同一局面(つまり4回目)が出現した場合」だろうか。これだと双方(や記録係)が気づかないという可能性があるかも知れない(脚注の日本シリーズも前者だった)。もっとも後者に関しては打開した後にもう一度同一局面に戻ってくる局面が想像しにくいけど。

 

第6条 千日手持将棋、B.持将棋 より

3.両対局者の合意に至らない場合で、手数が500手に達した場合は持将棋とする。ただし、500手指了時点で王手がかかっている場合は、連続王手が途切れた段階で持将棋とする。その際、第1項の①による双方の点数は一切関係なく、勝負はすべて無勝負とし、持将棋指し直しとする。

 

…なんとプロ公式戦にも(PCなどの)将棋ゲームのような「手数リミット」【*3】が採用されてしまった。しかもその時の点数が「負け」に相当する点数であった場合でも持将棋(無勝負・指し直し)になってしまう。もっともそうなる前に勝っている側が「入玉宣言」の条件を満たす事は可能だろうから【*4】、現実問題として負けている側が手数制限で「逃げ切る」のはまず不可能だと思われるが。

このルールが重要になるのはネット将棋での対局ではないかと思う。このルールは今でこそプロ公式戦のみ(しかも暫定施行)であるが、いずれトップダウンしてくる=アマチュア棋戦などにも遠からず採用される可能性はある。

マチュア棋戦(将棋まつりとかの大会も含む)だと大抵「入玉宣言ルール」があるので問題ないだろうが【*5】、それがない場所、つまり24のような「入玉宣言」ができないネット将棋【*6】だと点数が足りない側が持将棋提案──厳密に言うなら「投了」──を拒否して500手まで指して「逃げ切る」事が可能になってしまう。…もっとも24には500手どころか1000手以上でも指してくる人が(たまに)いるので「手数リミット」が設けられる(理想は「入玉宣言」もできるようになる)事はマイナスにはならないと思う。

 

…一つ気になったのは文言には「500手指了時点で王手がかかっている場合は・・・」とあるので、これをそのまま捉えると「後手だけ『500手ルール』で即詰みを逃れる」事が可能になってしまう。考えてみると分かるが、例えば先手が493手目から11手詰に至る連続王手をかけたとして、従来なら503手目で詰ます事ができるが、『500手ルール』だと「500手指了時点の局面は後手玉に王手がかかっていない(かかっていたら反則負けである)」のでそこで持将棋、という風になってしまう。一方で後手が同じ事をしようとすると494手から王手→「500手指了時点の局面は先手玉に王手がかかっている」ので、その後も指し継いで後手が詰ます(勝つ)事ができる。

…明らかに何か変である。そしてこれを更に曲解(?)すると

「500手を超える詰将棋(寿、ミクロコスモス、その他諸々)は全て作品として成立しなくなってしまう」

なんて事にもなりかねない(…理由は分かりますよね?)なので、こういった不具合をなくすためには文言を

「・・・ただし、499手または500手指了時点で王手がかかっている場合は、連続王手が途切れた段階で持将棋とする。・・・」

とすべきだ(これまでのように「実際に発生してから考える」は良くない)と思うのだが…?

…そもそも総手数が将棋に影響するルール自体がおかしいようにも思うし(例えば499手目以降に必死をかけた場合とか)。

 

第8条 反則 より

4.終局後に反則が判明した場合には、終了時の勝敗に関わらず、反則を犯した対局者は負けとなる。ただし反則が判明する前に、同一棋戦の次の対局が始まった場合は、終了時の勝敗が優先する。尚、待ったや時間切れについては終局後の指摘は認められない。

 

このルールは令和元年6月10日より施行されている(のを知らなかった…)が、それまでは「投了優先」、つまり「終局後に反則を指摘しても無効」だったものが「終局後の指摘も有効」になっている(ただし条文にもあるように「同一棋戦の次の対局が始まる前まで」)

マチュア棋戦でどういう扱いになっているかはよく分からないが、これまでどおりの「投了優先」で話を進めようとする人の方が多そう(下手したらプロ棋士にもいるかも?)である【*7】。また24は「自殺王手」や「王手放置」が可能なのでもしかしたらこれが原因で揉める可能性があるかも知れない【*8】。

*1:例えば2006年の日本シリーズでは同一局面が4回出現した事に誰も気づかず、そのまま投了まで指し継がれた、という事があった。

*2:24で指していると有段クラスでも気づかずに延々と指す人が結構いるのだが。

*3:ゲーセンにあった「天下一将棋会」には『200手で引き分け(成績上は「双方負け」の扱い)』ルールがある。

*4:例えば『令和初日』の木村一基九段(当時)vs菅井竜也七段戦は317手で菅井七段が投了したが、この時点で敵陣に木村九段の駒が8枚いたので「最短で6手後(=323手目)」に宣言する事ができた。

*5:そもそも棋譜を取っていないと「手数が分からない」ので500手ルールを採用しようがないのだが。

*6:自分は他のネット将棋を利用した事がないので詳しい事情が分からないが、少なくとも現時点で24には「入玉宣言ルール」が存在しない。

*7:1日制の将棋大会とかだと「すぐに次の対局が始まる」ので結果的に「投了優先」でもOK(そもそも棋譜がないと反則があった事を立証できない)、なんて事にもなりそうだけど。

*8:もしそうなった場合は起きた事象と対局者名と対局日時を運営にメールして対応してもらえば正しい(?)結果に修正してもらえると思う。