去る12月11日は札幌・共済ホールで「昇太・梅枝二人会」。行ったのは4代目梅枝襲名(9月27日)後初めて。
この日の道央は朝から時折酷い天気。「これ昇太師匠の飛行機ちゃんと飛ぶのかな」と心配になる。…案の定遅延があったそうだが何とか到着、会場に着いたのは開場(18時)の30分くらい前だったという。それでも公演に支障はなく滞りなく進む。
トークコーナー(2人)
梅枝 宗論
昇太 猿後家
中入り
昇太 ストレスの海
梅枝 景清
トークコーナーはまぁ読んで字のごとく。まず2人が同い年(1959年生まれ)である事に会場が驚く。それから30分くらい2人によるいろいろなトーク。…どこまでネタバレしていいのかわからないが(日が経って記憶があやふやになっている可能性もある…)
・昇太が(よく聞かれるけど)回答に困る質問
・昇太が「集めるのが好きなもの」
→戦国時代の美術品(甲冑とか)やレトログッズが好き、というのは有名だがそれとは別に(Wiki見たところこれについての記載がないので多分知名度は低そう)
・「昇太」という名前を変える気がない理由(東京では真打昇進時に名前を変える事が少なくないが自身は拒否したそうである)
・昇太の母校(東海大付属)が甲子園に出れそうになった時の話
・落語家、特に笑点メンバーともなると「OFF」がないようなもの
→街中で「昇太師匠ですよね」などと声を掛けられると「田ノ下雄二(本名)から春風亭昇太に変わらざるを得なくなる」んだそうで。…もし街中で落語家を見かけても無闇に声をかけるのはやめておきましょう(札幌だと梅枝師匠以外に会う可能性はほぼ0だけど)。
・桂小つぶ(梅枝の入門当初の芸名)が入門して間もなくからテレビや雑誌などに多数出演できた理由
→東京の落語界だと世に出られる(?)のは基本的に「二つ目」になってからであり、しかも入門時にイケメンだったとしても「前座」の修業期間(大体5年前後)の間に大抵「やつれてしまう」んだそうで。一方で上方はそういった階級制度(?)がないのでそういう規制がなく比較的自由に活動できる、という差があるそうだ。
昇太師匠は過日地元(清水)に帰った時に「足首を捻挫」してしまったそうで、長時間の正座がつらく、一時は見台によりかかって高座に上がっていたそうである(柳家喬太郎も同様の理由で高座で見台を使っている)。…笑点はそんなに正座している時間が長くなさそうだし、何より常設(?)の見台があるので観客や視聴者には分かりにくい(言われないと分からない)のかも知れない【*1】。…公演の当日にはある程度良くなってきたとは言えまだつらい、というので1席目に上がる時に持ってきたのが…
最初「何を持ってきたのかな」と思った。これは折りたたまれていて、広げると
自転車のサドルに座るような感じで「正座ができる」という椅子だった(画像はネット上でそれらしいものを探して「ヨドバシドットコム」から引用。なので昇太師匠が使っている物とは違う可能性あり)。これだと長時間正座していられるし和服を入れる鞄の中に一緒に入れられるので地方に行く場合でも便利だという。…ただ本来の(?)スタイルとは違うのであらかじめ観客に「使用許可」を得てから(会場からは大きな拍手=使ってもいいです)。
「ストレスの海」は昇太の新作落語の中でも代表作とも言えるものだが、実は聞くのは今回が初めてだった。
「景清」…と言われると真っ先に「源平討魔伝」を想像してしまうのだが(笑)、それとは全く無関係な話。ただこの噺の中で「清水寺に(『源氏の世など見たくない』という理由で)自分の両眼を刳り抜いて奉納した」という伝説がある平景清(藤原景清)は源平討魔伝の主人公「景清」のモデルでもある。
戦時中の日本には「禁演落語」という制度があった。遊郭や遊女が出てくる、所謂「廓噺(くるわばなし)」や間男が出てくる噺、その他卑俗的と見なされる──というか一方的に見なされた──53の演目が「国家権力によって」1941年に上演禁止とされた(戦後の1946年に解除される)。現在も演じられる演目でも「紙入れ」「蛙茶番」「口入屋」「子別れ(子は鎹)」「紺屋高尾」「三枚起請」「疝気の虫」「不動坊」「宮戸川」などが禁演落語とされていた。…今は日本の西にあるいくつかの国が同じような事をやっているよなぁ。
それはともかく、この中に「景清」は含まれていなかったが、一方で「景清」は言うなれば「現代の禁演落語」と見なされる可能性が高い。というのは噺の中で何度も「めくら」という単語が登場する事【*2】、そして主人公(?)の定次郎が失明したのは「前世の悪行の因縁のせい(なので治る事は無い)」としている【*3】のは視覚障害者に対する侮辱(のように聴こえる)、という理由から。…随分馬鹿馬鹿しい理由であるが、まぁ落語家も馬鹿ではないのでわざわざ公共のメディア上でそういう噺をする事はしないだろうし、寄席とかでも客席(例えば「白杖を持っている人がいたら全盲の人がいる」とわかる)を見て「ヤバそうな噺」は避けると言うし。…ただ平成開進亭の場合梅枝の演目は開演前には(配布されるプログラムで)公表されているのでもし該当者がいたらどうするのだろう、とか思ってしまう。…余計な心配だろうけど。ともかく、そういう落語を聴けるのは寄席ならではの、極論するなら「特権」とも言える。
年明けには「4人会」が3カ月連続である。中には春風亭一之輔や桂宮治が出演する回もある(幸か不幸か「同時に」ではない。また桂宮治とは4月1日に二人会が行われるが場所は江別市。…遠いわぁ)。後者の落語は1回だけ聴いたことがあるが、前者は「今日本で最もチケットが取れない落語家」と言われるせいなのかまだ聴いたことがない。
それとは別に今週末(15日)の「日本の話芸」では桂文之助が出演、「軒付け」を演じる。…以前動楽亭で聴いた、なんてのは関係なく絶対に見ないといけない。