…タイトルだけで今回の記事の内容がわかった人はかなりの「通」に違いない(そしてこのブログの読者にそういう人は1人いるかどうか)。
この度は「落語を聴くというビッグなイベントに参加」してきた。…通な人ならこれだけで「誰の落語を聴いてきたか」がわかる。
10月27日に行われた「春風亭昇太独演会」。昨年11月に開催予定だった(中止された)公演の代替なのかはわからないが(その時のチケットでも入れたのかが分からない)、今年2回目の春風亭昇太の落語(何度もフルネームで書くと冗長な感じがしたので以後「昇太」と書きます)。
「あいつの落語のどこが面白いんだ?」などと偉そうに宣う輩を時折見かけるが、ハッキリ言ってそうやって「自分の価値観が絶対に正しい」と思っている奴ほど愚かな物体は存在しない。そもそもそいつの価値観が絶対に正しかったら「この世に落語家は1人しかいない」はずであるが、落語家は東西合わせて千人近くいる(もっといるのかな?)。その「意味」も分からない輩が偉そうに能書きを垂れているのを見るとそれこそ「藤井聡太よりもそいつを先に殺してやりたい」なんて思ってしまう。
…いきなり話がとんでもない方向へ逸れてしまった(笑)。とにかく落語である。
この日の演目は以下の通り(事前に公表はされていなかった)。
昇太 オープニングトーク
昇りん ん廻し
昇太 粗忽長屋
昇太 一眼国
仲入り
昇太 茶の湯
この日の独演会は出だしから特殊で、通常は開演まで下りている緞帳(一番手前の幕)が上がっている。そして開演前は出囃子が(アトランダムに)流れている事が多いのだがこの日はジャズっぽい曲が流れている(ちなみに昇太の出囃子は「デイビー・クロケット」)。そして開演時間になると「カジュアルな出で立ちで」昇太登場。それが「オープニングトーク」。主に東海大学(昇太の母校、ちなみに中退している)の客員教授に就任した時の話や三遊亭小遊三(が落語芸術協会の会長就任を拒み続けた)の話とか。そこから「好きな言葉」の話になり(落語家は色紙に「好きな言葉」を添える事が多いそうだ)、その時の小遊三の答えが「ハードルは 高くなるほど ○○○○」。…面白過ぎてブログとかではとても書けません(笑)。
(春風亭)昇りんは昇太門下。実家がリンゴ農家なので芸名に「りん」とつけたそうである。
昇太は新作落語を多く作っているが(代表作と言えるのは「ストレスの海」だろうか)、この日の演目はいずれも古典落語。近年演じられている「粗忽長屋」は林家たい平のアレンジ(「長屋という題名なのに長屋の登場人物が2人しかいない」という事に疑義を抱き登場人物を増やした)なんだそうだ。
1席目が終わり立ち上がると突然着ている羽織を脱いで、脇に置いてあったもう1着の羽織に「高座の上で」着替える、という前代未聞?の演出(普通は2席続ける場合でもいったん降りて着替えてからまた登壇する)。ただこれは「独演会では時折やる」そうで今回が初めてではないようだ。ただ、前に着ていた羽織を「高座の上から放り投げる(勿論袖で弟子が受け取っている)」ので「もっと着物を大事にして下さい」と苦情が来ることもあるんだとか。
以前も書いたが昇太は「枕」も非常に面白く、それだけで1席の新作落語みたいになっている【*1】。つまりこの日は「オープニングトーク」を含めて「都合7席」楽しめたようなものである。そんなリーズナブル(?)な落語家をつまらんという人は「人生の何%かを損している」とか思ってしまうが、そうだとしても「それはご愁傷様で」くらいの事しか言いようがない。例えば「(体質とかで)酒を飲めない人」に対し「酒を飲めない事を馬鹿にする」のはとても「人間」のやる事ではないでしょうから。
ホールのロビーには今後予定している独演会のチラシが数種類。中には「月亭方正独演会」というのもあった(来年の2月17日予定)。ちょっと気になります。