席(今回はあらかじめ名札が置かれて席が決まっていた)に座って待つ。他の指導対局志望者も入って来る。時間になって室谷由紀女流二段と山口恵理子女流初段が入室する(鈴木環那女流二段は場所の都合で解説会会場の第二酵素ビルで行われた)。それぞれ手合いを述べて対局が始まる。下は4枚落ちから上は今回も(?)「平手希望」、しかも戦形を指定する方(「後手番でゴキゲン中飛車を」と聞こえた記憶がある)がいた。自分はマイペースで(?)角落ち希望。
…指導対局が決まった時から(正確には申し込んだ時から)角落ちを教わろうと決めていたのはいいが、そのくせ角落ちの勉強はほとんどしていない(苦笑)。無論相手を軽んじていたわけではなく単に時間があまり取れなかっただけなのだが。前日にホテルで柿木将棋レベル7相手に2局ほど指したが、こんなので勉強になるわけがない(笑)。結局ほとんどぶっつけ本番(?)で臨む事になった。
飛車先の歩を交換して△2三歩と受けた上の図の局面、自分はほぼノータイムで▲2八飛と引く。いや、それだけならまだいいのかもしれないが、次の上手の△6四歩に対しこれもほぼノータイムで▲3八銀~▲4六歩とのんびり構えようとしている事がおかしい。おかげで上手の右銀の素早い動きに延々悩まされる羽目に。ここは▲2六飛~▲7五歩~▲7六飛とひねり飛車風に構えておけばちょっとはマシな将棋になっていた…と思う。
11時を過ぎる頃(室谷女流二段の後ろに時計が見えた)には早いところでは既に終局、感想戦まで終わっているところもあったが、自分は延々と(美化していえば「丁寧に」)上手の攻めに応接し続けて
「どう考えても11時30分までには終わらないだろうな」
という局面に。暴発(無理攻め)していれば時間内に終わらせることはできたかも知れないが、自分にそういう趣味(?)はないので結局11時30分はおろか「13時(解説会の受付開始時間)までやっても終わるかどうか」という局面で指し掛けに。
よくプロの将棋の感想戦で一つの局面に対し双方が(勿論勝った方も)「ここでは自信がなかった」と言う事がある。よく聞くと不思議な表現だが、今回の指導対局も自分は序盤の失敗からほぼ受け一方で「自信はなかった」のだが(※1)、室谷女流二段の方も飛金銀桂の4枚で6~8筋を制圧しているようでも「あまり自信はなかった」と仰っていた。指し掛けの局面から想定される手順をいくつか示されたが、どの変化も「下手の反撃が厳しい」。…ま、所詮自称アマチュア二段の大局観(の精度)なんてこんなものよ(笑)。
解説会まで1時間強の時間があるので近くで昼食を取って、念のための夕食を用意して(これまでの解説会の帰りは「乗り継ぎ時間ほぼゼロ」で夕食を食べるのはおろかキヨスクとかで買う時間すら取れない、というパターンが多かった)、時間までコンビニで時間をつぶして会場へ。
この時期になると時々目にするフレーズに
「○○を見ずに年を越せるか」
というのがある。平凡に(?)紅白歌合戦が該当する人もいるだろうし、ギャンブル狂だったら有馬記念かも知れない(確か何年か前の有馬記念のキャッチコピーが「有馬を見ずに年を越せるか」だったような気がする…)。自分もつい数年前までは「中山大障害」だったが、今では両国将棋囲碁センターの佐久間席主の言葉ではないが
「順位戦解説会を見ずに年は越せない」
がピッタリである。その順位戦解説会は2002年か2003年頃にお二方の地元世田谷区経堂の区民会館(のようなところ)で「告知なし(口コミだけ)」で20~30人くらいのファンを集めて行われたのが最初だという。「当時は若かった」からかも知れないが、何と5時間くらいもやったそうである(あまりに長くて会館の管理人に怒られたとか)。
今年の順位戦解説会は昨年末の「電王戦リベンジマッチ」の話から。形勢が僅差ならともかく、日付が(というより年が)変わって「反則と時間切れ以外で負ける理由がない」局面でCOM(ツツカナ)が1手10分考えてくるのは集中力と体力が持たない(=眠くなる)、という。その時は「後日に指し継ぎ」という形で指し掛けたが、中継でも森下九段が漏らしていたように「プロ棋士だったらとっくに投げてるでしょう」という対局を続けようとする決定には実は相当頭に来ていたらしく、島九段のところに
「新年早々(つまり指し掛けから数時間も経たないうちに)森下九段から怒りの電話がかかってきた」
という。その後連盟の谷川会長やドワンゴの川上会長にも文句を言ったといい、どうしてもこの対局の決着をつけるというのなら
「 」
という条件を突き付けたそうである。結局この対局は「森下九段の判定勝ち」という裁定(?)が下るが、
「指し掛けの局面をCOM同士で指し継いだら後手が全勝した」
という事実(表面上の理由)だけでなくその「条件」のために指し継ぎを諦めた…のかも知れない。真実はわからないが…
この話から叡王戦の話に変わる。やはりと言うと失礼かもしれないが、関係者の間でも「叡」の字を正しく書けないという人は多いそうである。「英」と書いてごまかすとか、ネット上で見かける「AO戦」という表記を使うとか…(※2)
そして第1期電王戦の話にもなったが… これに関しては「かなり際どい話」もあったのでここでは内容は伏せる。
1局目、▲佐藤康光九段-△森内俊之九段戦(12月16日、A級順位戦)の解説へ。なんとここまで僅か15分という異例の早さ(笑)だったが、そこから突然囲碁の話に脱線して結局大盤で初手▲7六歩が動かされたのは解説会開始から30分が経過してからだった(笑)。
自分は携帯中継でこの将棋を見ていたが、この手を見た感想は正に
「何だこりゃ?」
である。こんな手を指すのはど素人か佐藤康光九段かPonanzaくらいだと思う(笑)。どういう構想があったのかはおそらく指した本人にか分からないと思うが、この新手も△2二銀(▲6八銀)△2三銀の2手であっさり瓦解してしまい「あとはどう粘るか(感想戦での佐藤九段の言葉)」という将棋に。しかし最終的にはその粘りが功を奏した結果となった。
この対局の解説中に時々出てきたのが佐藤康光九段の著書「長考力」という本(例によって棋譜の解説を中断してその話になる)。お二方がその内容にすごく感動されていた&イベントの参加者に薦めていたので「これは買わなきゃ」と思ったが…まだ買っていない(笑)。このブログを書くために(解説会の内容を記録した)ノートを見返していた時にようやく思い出すとか酷い(笑)。
休憩をはさんで2局目、▲森下卓九段-△藤井猛九段戦(7月8日、順位戦B級2組)。この対局は森下九段が「今年の2手」と称した手が登場する…と前置きしておいてやっぱり話が脱線する(笑)。師匠の花村元司九段(とその後援会の方)の麻雀の話(※3)から始まって、そこからあんな話やこんな話に展開されて…
後手のゴキゲン中飛車で始まったこの将棋、この局面からの森下九段の指した2手が「今年の2手」。パッと見た感じでは▲9九香とか▲6三とあたりが浮かぶが…
ここで指された▲7九金(△6五銀)▲2八飛という手は普通の人にはなかなか思い浮かばないと思う。自分だったら▲7九金はもしかしたら思いつくかもしれないが、その次の▲2八飛は盤駒を使って検討しても思い浮かばない自信がある(笑)。しかし飛車を一つ引く事で自陣の守備力は上がるし、▲9九香といった香を渡す手も指せるようになる(2七のままだと△2四香がある。2二に歩がいるので▲2五歩が打てない)。言われないと意味が分からないが言われると納得の手である。
本当はこのあともう1局解説の予定があったのだが、時間の都合上中止となった。島九段は解説会の始まる時に
「もしかしたら今日は3局目まで解説できないかも知れません」
と仰ったが、その通りになってしまった(笑)。
解説会は想定より2時間近く早く終わってしまったし、購入した本に揮毫をいただこうとしたら既にサイン本だった(前回記事参照)、と微妙に予定が狂った(?)今回の解説会である。
「思いもかけず時間が余ったのでどこかに寄ろうか」
とも考えたが、2時間という時間は何かができそうで意外と中途半端な時間である。そこで「まっすぐ帰宅するという手は常に好手」という将棋界の定跡(※4)に則って帰路につく。青春18きっぷなので東海道本線を延々と下っていくだけなのだが、今年の3月に「上野東京ライン」が開通したことで今は「東京駅始発の東海道本線」がない(時間帯によってはあるのかも知れないが)。つまり「座れない可能性がある」。実際最初に来た下り電車は座れないどころか「立つスペースすら満足にない」くらいの混雑だった。1本(10分)遅らせたことで東京駅から座っている事ができたのでやはり「まっすぐ帰宅するという手は好手」だった(笑)。
※1…正しく書くなら「うまく凌げれば(駒をもらえれば)大駒のにらみを生かした反撃が楽しみになるが、うまく凌ぐ『自信がなかった』」となるだろうか(図面なしで説明しても全く伝わらない…)。
※3…森下九段は花村九段から「麻雀はやるな」と言われた(ので今も麻雀はやらない)そうである。
※4…先崎九段の著書(どれだか忘れた…)にこの言葉が載っていた。