前回の記事からおよそ3週間。はじめのうちは週1ペースで書いていた(書けていた)ブログがこんな体たらくである。
別に何かを書くのが嫌いではなく(むしろ好きなほうである)、単純にブログを書く事より優先したい(しなければならない)事が出てきただけ。それが構想作の創作…だったら良かった…かも知れないが残念ながら(?)そうではなく、それどころか自分がパズル作家である事を忘れてしまいそうな状態である(実際ここ2ヶ月くらいは一切のパズル創作ができていない)。
…何が言いたいかというと、
「その人の置かれた状況は一瞬で劇的に変化する事もある」
という事。具体的に「何が」あったのか、は多分にプライベートな話なのでここでは書けないが。
個人的な事情はさておき、新しい棋戦(優勝者は電王トーナメント優勝ソフトと2番勝負を行う)の名称が公募&投票で「叡王戦(えいおうせん)」と決まったようである。新棋戦の構想が発表された時、自分は「まぁ6割もエントリーがあれば良い方だろうな」なんて考えていたが、蓋を開けてビックリ、不参加棋士は全棋士中5名だけというエントリー率(96.86%)。
その記念すべき?開幕カードは森内俊之九段vs森下卓九段。…思わず反応してしまった(笑)。この両者の対局(通算成績は森内九段から見て22-11)っていつ以来だろう。有名なところ(?)では2007年の将棋日本シリーズの決勝戦があるが…
組み合わせ抽選は完全ランダムだろうが(※1)、それでも個人的には0.何%かの作意があったのでは、なんて思ってしまう。例えば開幕の日に加藤一二三九段がいる組を持ってきたあたりとか。
そんな中、遺憾だと思っている人が多そうなのが「羽生善治名人と渡辺明棋王の不参加」。渡辺明棋王は自身のブログで「様々なことを総合的に考えて自分で決めた」と書かれているが、たった2人がいないだけで「テンションがん下がり~」とか思っている人もいそうだ(「がん下がり~」っていつの言葉だよ…)。
第1期電王戦(3月~5月に2局)が自身の持つタイトルの防衛戦と時期が重なる(そちらに集中したい)から、という一部メディアの推測?もまるきりハズレではないと思うが、少なくとも自分は「エントリー制」と聞いた時に「この2人のエントリーはないだろうな」と思っていた。
別に後出しジャンケンをするわけではなく、これまでの両名のコンピューター将棋に関するコメントを見る(総合する)とエントリーしない可能性の方が高い、という推測は自分でなくてもできた、極論するなら
「将棋界を真摯に見つめてきた人にとってはこの結果(両名の不参加)はむしろ当然」
とさえ言える。同じ理屈で自分は(コンピューター将棋にあまり好意的ではなさそうな)郷田真隆王将も出て来ないだろう、と思っていたので、トーナメント表に郷田王将の名前を発見した時は正直かなり驚いたものである。
開幕戦は森下九段の先手で相矢倉に。一つの構想を持って臨んだそうだが、たった一手(64手目△5七歩成)の見落としで全てが瓦解してしまった。厳密にはその4手前(59手目▲4六銀に対する△5六歩の突き出し)で「将棋は終わっていました(感想戦のコメントより)」。残念ながら「森下ワールド」は不発に終わってしまった。
この時点で叡王戦は自分にとって「どーでもいー棋戦」になった(笑)。やはり組み合わせ抽選に作意、というより悪意があるんじゃないか、と思える(笑)。
…ところでこの叡王戦の「序列」が気になった人はいるだろうか。7大棋戦に関しては契約金の順番に
と棋戦の序列(タイトルの序列、ではない)が決められており、連盟HPの「棋戦情報」はこの順番に並んでいるし、1日の対局予定・結果でもタイトル戦の番勝負を除いて棋戦の序列順に並んでいる(※3)。では一般棋戦はどうなっているかと言うと、
となっている。公表されている賞金額(朝日オープンの優勝賞金が1000万円)で考えてもこれが契約金の順番=「棋戦の序列」で間違いなさそうだ(日本シリーズの優勝賞金は500万円だが対局数自体が少ないので契約金総額は安くても不思議ではない)。では叡王戦がどこにいるかと言うと、「NHK杯」と「将棋日本シリーズ」の間にいる。
…意外に低いじゃないか、と思った人もいそうだ。何せ以前ぶち上げた(そして白紙になった)「電王将棋タッグマッチ」は「竜王戦・名人戦次ぐ高額賞金」を謳っていたのである。もし叡王戦がそのコンセプト──竜王戦・名人戦に次ぐ高額賞金──を引き継いでいるならこの序列(朝日オープンより下、しかも銀河戦やNHK杯よりも下)はどう考えてもあり得ない。それこそ「(ドワンゴに)足元を見られた・安く買い叩かれた」ようにも見える(2007年度の数字になるが、「実録名人戦秘話」によると朝日オープンの契約金は8000万円とのこと)。
一時と比べて棋戦の数が減った今、新しい棋戦ができるのは将棋界にとってマイナスであるわけはないと思うが、それでも「この叡王戦は日本将棋連盟にとってどれほどの(経済的な・それ以外の)メリットがあるのだろう?」、なんて事を考えてしまう。そのあたりの話を島九段と森下九段に聞けたらいいな、とも(12月19日に「いつもの」イベントが開催される予定。既にこのイベントのための日程・予算を組んでいる)。
「叡知」という単語はあるが、日常では「英知」と書くほうが多い(どちらでも基本的に意味は同じ)。「比叡山延暦寺」は有名だが、ほとんどの人にとっては「日本史の中の単語」くらいの認識しかない(つまり忘れているかボンヤリとしか覚えていない)と思われる。
ではどんな人ならこの「叡」という漢字に馴染みがあるだろうか、と考えて自分が出せた答えは「三国志」が好きな(詳しい)人。というのは曹操の孫(※4)で魏の2代目皇帝(※5)となった人物の名前が「曹叡(そうえい)」、つまり三国志の主要人物の一人(と言っても曹操・劉備・諸葛亮などと比べると知名度はかなり低いと思うが)なので。
これが5画くらいの易しい漢字だったら話は違うだろうが、「叡」は16画という程よく難しい(?)漢字である。話題性と合わせて考えるとこういう漢字はクイズ番組にとっては「格好のネタ」である。
つまりこの先(今から3~6ヶ月くらいの間に?)クイズ番組なんかがこぞって「叡」という漢字を書かせる(あるいは読ませる)問題を出す可能性はある。その時に「叡」という漢字が書けると「叡」を書けなかった解答者を「あいつ馬鹿だなぁ」なんて言いながら見ている自分がいます(笑)。そんな貴方の為に(?)「叡」を書くポイント。
叡
・「うかんむり」ではなく、横に棒が伸びている。
・冠の下に横棒一本。
・その下に「谷」…のようで、下の漢字は「口」でもなければ「日」でもなく「目」。
・つくりは「又」。
…わかってしまえば実はそんなに難しくなかったりする(笑)。
※1…ランダムで決める場合でも「予選の1回戦で師弟・肉親の対戦は組まない」なんて決まりがあったような気がする。田中魁秀九段と福崎文吾九段の師弟は「かすっている」(両者とも勝つと予選決勝で当たる)。
※2…田丸昇九段の著書「実録名人戦秘話」によると、1年あたりの契約金は竜王戦<名人戦(2007年度の数字で竜王戦=3.4億:名人戦=3.6億)らしいが、前者は読売新聞社の1社負担、後者は朝日新聞社と毎日新聞社の2社負担(折半)なので、「1社あたりの負担額」という事で竜王戦のほうが上、という事らしい。
※4…実は血縁上はそうではない、という説がある。
家系図上では曹操→曹丕(そうひ)→曹叡、となっているが、曹叡の母である甄氏(しんし)はもともと曹操のライバルだった袁紹の次男袁煕(えんき)の妻で、戦いの折曹丕が甄氏を略奪(!)した時に既に生まれていた袁煕との子を養子とした、その子が後の曹叡(つまり曹叡の祖父は曹操ではなく袁紹)である、という説。
※5…時折勘違いしている人がいるが、曹操は皇帝にはなっていない(理由は諸説あってハッキリしない)。