DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

詰将棋の出てくる落語

前回持駒を「貼る」≒「埋める」って書いたが、確か昨年の岡崎将棋まつりで渡辺明竜王(当時)は「並べ詰み(単純に持駒を次々打っていけば詰む)」の局面で「貼る」を使っていたような(その後のNHK杯解説では受けの手に対し「貼る」と言っていた)。 …まぁいいか(笑)。

8月15日に「米朝一門会」に行った事は前にも書いたが、この日の最初に桂鯛蔵師匠が演じられた「二人ぐせ」には噺の中に詰将棋が出てくるのを御存知だろうか。落語では将棋や囲碁が出てくる噺がいくつかあるのだが(有名な噺としては「笠碁」)詰将棋」というのは珍しいと思う。しかも具体的な図面が示されているのはもっと珍しいと思う。

事あるごとに「呑める」が口癖の喜六と事あるごとに「詰まらん」が口癖の清八(※1)がその口癖を直そうと「今度それを言ったら罰金千円」を科す事になった。
何とか清八から罰金をせしめようと思った喜六は町内の知恵者の甚兵衛を訪ねる。すると甚兵衛は清八の将棋が好きという性格をついた策(?)を授ける。
「あいつ(清八)が風呂屋に行こうと誘いに来るはずや。そこですぐに返事したらあかん。3回くらい呼ばれたらそこで『すまんすまん、考え事をしとった』と答えるんや。『何を考えとった』と聞かれたら『ちょっと詰将棋を考えとった』と答える。すると絶対あいつは食いついてくる」
その詰将棋というのは
盤の真ん中に王さんがひとつ、あとは何もないねん。そして持駒は角と金と歩が3枚。角とか金とか持ってるから詰みそうにも見えるけどこれはどうやっても詰まへん。あいつもそれを知らずにうんうん唸って考え出すから頃合を見計らって『どや、詰まるかな?』と切り出せばきっと『だめや、詰まらん』となるはずや」

文中の関西弁の文法(使い方)には突っ込まないで下さい(笑)。…それはともかく(?)、この説明から作品中に出てくる詰将棋の初形は下図だとわかる。
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文中にもあるようにこの詰将棋は不詰(不完全作)であるし、ある程度の棋力の持ち主ならこの初形を見て一目で「詰まない(駒が足りな過ぎる)」と判断できるだろうが(※2)、そこはあくまで落語の中の話、要は『詰まらん』の言葉を引き出すための小細工なので深くは突っ込まないように(笑)。
…それにしても将棋と全く関係のない(と思っていた)落語会で将棋の話が出てくるとは夢にも思わなかった(笑)。これも行き(下り)の電車で「光速の詰将棋」を読んでいたせいだろうか(…それは絶対ないって)。
ちなみにこの噺のさげは喜六の思惑どおり清八に『こら、詰まらん』と言わせて千円をせしめる事に成功するが、それに浮かれた喜六が『おおきに、これで一杯呑める』。
…お後がよろしいようで。


※1…二人の名前を思い出せないので(苦笑)、ここでは便宜上上方落語に頻出する「喜六」と「清八」(江戸落語には登場しない)を当てることにする。

※2…柿木先生にかけたところ6秒で「詰みませんでした」