DJカートン.mmix

それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

…歴史的な珍局?

寒い時期が続いていますが、皆さんはご自愛なされているでしょうか(※1)。
自分は幸いにして今のところインフルエンザ、ノロウィルスにこそ感染していませんが、あまり体調は良くないです(…なので先週のブログは更新できなかった)。

今回はここ数日の出来事について書こうと思う。
…と言っても何となくメインは将棋の話になってしまうのだが(この間旅行はしていないし、音ゲー、競馬、ボートレースも全然触れていない)。

日本将棋連盟モバイルの「人気棋士コラム」では第3回電王戦登場棋士特集という事で1月24日に森下九段のコラムが掲載されている意外にも?森下九段のコラムは初である。何故今までなかったのだろう…)。
「想像を超えるプレッシャーに感謝」
という題名でいかにも森下九段らしい口調(文章だから「文調」と言うべきか?)で書かれている。

以前何かの本で
プレッシャーとはその人に対する期待や信用と言ったものの裏返し
なんて言葉を目にした記憶があるが、確かに電王戦に出場するプロ棋士は通常の棋戦と比べて「背負っているもの」が違う(例えば「普段は将棋に興味のない人の目」とか「将棋連盟の威信」とか…)。
ましてや森下九段は「パソコンの前に座るだけでキツイ」と仰るのだから(※2)、電王戦出場棋士に課せられた期待や信用は我々部外者の想像を絶する(ネット上で軽々しく論ずべきではない)ものだと思われる。
それにしてもそういう対局の模様(≠携帯中継)を500円で観戦できてしまう、というのはやはり何か間違っているような…

その一方で(?)、
・先日の順位戦B級2組は敗れて3敗に後退、B1復帰は絶望的となってしまった(※3)。
竜王戦2組昇級者決定戦の相手は稲葉陽七段に決まる。…まぁ誰が相手だろうと負けたら全てが終わる(?)のだが。
・王位リーグの組み合わせが発表された。…この手のリーグ(王位リーグや王将リーグ)は早い話が「誰と当たっても強敵」なので、あまり巡り合わせを考えても仕方ないと思う。

話は変わって先日(26日)放送のNHK杯▲豊島将之七段-△西川和宏四段戦。終盤、1枚目の図の局面から▲9四歩△8二玉▲9三歩成△同玉と進行して2枚目の図に。
イメージ 1イメージ 2

…盤面の駒の配置は全く同じだが先手の持駒の歩が1枚減って後手の持駒の歩が1枚増えている(まるで間違い探しみたいだ…)。何だか裏取引(?)で歩を1枚渡したような格好である。
ただ、この場合▲9四歩と▲9三歩成を指すまでの時間(それぞれ30秒弱)を先の局面を読むのに使えるので、解説の稲葉陽七段の言葉を借りるなら「一歩で1分を買った」という計算になる(当の豊島七段の企図  意図的に1分を稼ぎに来たのか、▲9四歩という手を反省したのか  はわからないが)。
千日手含みの手順で時間を稼ぐ、という事はたまに見かけるが、今回(盤面の駒の配置は同じでもお互いの持駒が変わっているので、この2つの局面は千日手の条件である「同一局面」とは見なされない)のように「一歩を犠牲に」時間を稼ぐ、という手法は極めて珍しいと思う(※4)。

自分はTVを見ながら
「そういう方法もあるのか」
と感心する一方(実際この方法で残した1分の考慮時間が活きた…と思う)、
「これでこの一歩が勝敗を左右したら歴史的な珍局になるかも知れない」
という皮肉っぽい事を考えていた(笑)。 …すると最終盤、
イメージ 3

△8八角の王手に対し▲6六歩と突いた局面。実戦はここから△5四歩以下先手玉は即詰み(▲6六歩でなく▲6四玉なら不詰だったが、あくまでそれは結果論 =※5)となったのだが…

…あれ? この歩(最後の一歩)、あの時に「1分を買った一歩」では?

仮に前述の4手をなかったものとして同じように進行したとすると下図、(後手に一歩がないので)先手玉は詰まない。結果として「あの時の一歩が勝敗を左右」してしまったのである(※6)。
イメージ 4

将棋の世界には「勝ち将棋鬼の如し」という格言がある。一言で言えば「将棋で勝つ時は一見意味のなさそうな手や遊んでいる駒も大詰めの局面で役に立ってくれる」という意味。
この対局でも一見遊んでいる(それどころかこれが邪魔で△9八飛から△9九飛成とできなかった)9九のと金が最後先手の玉を詰ますのにきっちりと働いているのだが、まさか「1分を買った一歩(4手)」までが西川四段の味方になろうとは
ここまで劇的、奇跡的、(豊島七段にとって)不幸な将棋はちょっと例を見ないと思う。とは言え、あの時点で50手も後に起きる悲劇(?)を読めたらもはや「この世の存在」とは言えまい(自分のは「予想」でも「読み」でもなく、「皮肉を込めた期待」ですから…)。

ナンプレの「挑戦状?」を叩きつけ(?)られた(ゲストブック参照)。
まさかこういう事が起きるなんて全く予想だにしていなかった(苦笑)。
ゲストブックのままでは非常にわかりにくいので図に起こしたのが下図。
イメージ 6

自分は雑誌編集者ではないので、「理論的に解けない問題」とかでない限り作品(形や難易度など)についての評価はしません(そもそもここはそういうブログではないし。ちなみにこの問題はちゃんと解けました)。

…どうしても話の中心が森下九段になってしまう(笑)。


※1…ちなみに「自愛」は「自分の健康を気遣う事」という意味なので、たまに見かける「お体ご自愛なさって下さい」という表現は言葉の重複、つまり「頭痛が痛い」と言っているのと同じ事になってしまう。

※2…同コラムでは「市販のソフトと指すのは大好き」とも書かれている。「ストレス解消も兼ねて、一献やりながら…」という話は先日の順位戦解説会(後の夕食懇親会)でも聞けた。
ちなみにその「市販のソフト」は「柿木将棋(バージョンは聞いていないがおそらくⅧ)と仰っていた(笑)。

※3…理論上はまだ可能性は残っている。ただし、まず第10戦(2月13日)で
・森下九段が先崎八段に勝つ
・村山六段が南九段に敗れる
・豊川七段、戸辺六段の最低でもどちらかが敗れる
(最終戦で両者の直接対決があるため、2人とも勝利だとどちらかの8勝2敗が確定してしまう)
…の全ての条件(これだけで確率16分の3)を満たし、更に第11戦(3月13日)でも同じくらいの条件をクリアする必要があるそれらを全てクリアして森下九段が昇級する確率は512分の9=1.76%!)。
かつて将棋界(順位戦)でここまで低い確率の事象が実現した、という話は聞いた事がない(笑)。

※4…以前もチラッと書いたのだが、これがゲーセンにある「天下一将棋会」だと「200手引き分けルール」に持ち込むための時間(手数)稼ぎ、という理由で稀に行われるようである(自分は以前これで必勝だった将棋を引き分け  連勝記録が止まるので実質「負け」と同義  に持ち込まれた事がある)。

※5…▲6四玉以下△5五銀▲6五玉△6五歩▲7五玉△6三角成とすれば受けなしなので後手が勝ちそうだが(豊島七段もそう読んだので観念して?▲6六歩としたのかも知れない)、それには▲7二銀成△5三玉▲4三金!△5四玉▲4五金(下図)以下の即詰みがある(▲7二銀成に△同金は▲5四桂△同馬▲5一銀以下、△同馬も▲同飛成△同金▲5一角以下いずれも詰み)、という「柿木先生の御神託」(香龍会のブログにあった言い回しをパクってしまいました…)をいただいた。
…だからと言って、実戦(30秒将棋)でこの変化を読みきれなかった豊島七段を責める気はない、と言うより責める行為はお門違いというものでしょう。何しろこちらは決着が付いた後に実現しなかった結末について言いたい放題言っているだけ(しかもソフト=他人の力を使って)なので(笑)。
イメージ 5

※6…長く難しい終盤が続いたせいか、稲葉七段と(司会の)矢内女流四段は放送ではこの点に触れていない(その事実に気づいていなかったのか、あえて触れなかったのかはわからない)。