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それって早い話「金儲けのための忖度」って事では。

将棋文化検定、とそれにまつわるエトセトラ

時折「詰将棋作家の棋力」を考えることがある。上を見れば谷川浩司九段のように指し将棋も詰将棋創作も極北の域という方もいるわけだが、では反対に下のほうはどうなのだろうか、と。
詰将棋を作る以上駒の動かし方やルールを知らないというのはあり得ないし、諸々の詰め手筋(捨て駒は無論の事、中合や打ち歩詰め回避の不成など)を知っている以上初心者(に毛の生えた程度)というのも考えにくいので、(定期的に)詰将棋を作る人は最低でもアマ初段くらいはある、と考えて間違いはなさそうだが。
現時点では本格的に話を組み立てる予定はないのだが(笑)、「詰将棋ガール!(仮)」の主人公の少女の設定(棋力)にも影響を及ぼす要素なので少し真面目に(?)考えてみた次第。
…自分(の棋力)ですか? 一応将棋倶楽部24での直近レート平均(※1)からアマ二段くらい+4級、と言ったところでしょうかねぇ。詰将棋作家の中では間違いなく最弱の部類と言える(笑)。

棋力の最後についている「+4級」というのは何か、って? これは「将棋文化検定4級(に合格)」という意味。
今更その内容を書くこともないだろうが、将棋文化検定を一言で説明すると将棋の「歴史」「知識」「雑学」を問う問題(検定)で、将棋の棋力は全く関係ない。戦法の名前を問う問題は出てくるが、次の一手詰将棋の問題は当然(?)出てこない。
昨年10月に記念すべき第1回が2,4,6,9級の4クラスで行われ、自分は4級を受けて見事合格したのである。ちなみに受験会場の自分の席のすぐ前には鈴木大介八段が座っていた(確か同じ4級を受験されていた)。
第1回の結果は今週(10月2日号)の週刊将棋にも載っているが、4級の合格率は60%(個人的にはもっと高いかと思っていたのでこの数字は意外)、2級の合格率は24%!という難関であった。『CLEAR RATEが24%のLEVEL11譜面』と書けば音ゲー(beatmaniaIIDX)をやる人にはその難しさが多少は理解できるかと(笑)。
後に2級で出た問題(週刊将棋などに掲載された一部)を解いてみたのだが、正解率6割程度だった(合格の見込みは薄かった)ので、「名より実」を取りに行って良かった、と思っている(笑)。

4級だから難易度(≒マニア度)は中程度だろう、と思っていたのだが、いざ問題を目にするとそれこそ「カルトQ(古い…)」に出てもおかしくなさそうな問題もいくつか。例えば…

・4人制チャトランガ(※2)に駒は何種類ある?
棒銀戦法を英語で何と言う?
・江戸時代後期の棋譜にその名が残っている最古の女流棋士の名前は?
・明治41年に棋戦を最初に主催した新聞社の名前は?

2問目を目にした時、思わず心の中で
「そんなの『スティック・シルバー』でええやん!」
と叫んだものである(笑)。実際の出題では全て3択問題だったのだが(選択肢に『スティック・シルバー』はなかった…)、それがあってもズバリ答えるのは難しいと思う。もし上記4問を選択肢無しで全問正解できたらそれだけで1級に合格する権利があるかも知れません(笑)。ちなみに答えは上から

・5種類(兵・車・馬・象・王の5種類。2011年の新春お好み対局で紹介していた)
・クライミング・シルバー
・大橋浪女
・萬朝報(よろずちょうほう)

…とまぁ、こんな感じの問題が何問か(Aコースには何問)出るわけである。
今回のメインテーマは「米長邦雄永世棋聖」「羽生善治三冠」と打たれているので、例えば

・以下の局面(羽生三冠が1手頓死を食らった)の対戦相手は?
イメージ 1

・羽生三冠の少年時代によく被っていた野球帽の球団は?

・米長永世棋聖が自宅やその近くの母屋を解放して主宰した研究会の名前は?

・その研究会で「師範代」格とされた棋士は?

なんて問題がいずれかのコースに出てくる可能性は高い。
…答え? わざわざ書くまでもないでしょうから割愛(笑)。

試験終了後はその会場で受験したプロ棋士によるトークショー指導対局が行われた(はず)。自分は運良く指導対局に当選したので中田章道七段に二枚落ちを教わった。
…プロ棋士指導対局は大雑把に分けると
・下手に伸び伸び指させるタイプ
・下手の指したい手を徹底的に潰しに来るタイプ
の2種類がある(と思う)が、中田七段は典型的な?後者のタイプであった(隣で指導対局をされていた鈴木八段は前者のタイプだった)。
二枚落ち定跡として有名なものに「二歩突っ切り」「銀多伝」の2種類があるが、どちらも出だしは△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩である。そこで上手が△5五歩と角の利きに突き出す「5五歩止め」という定跡も有名でこれも大抵の駒落ち定跡本に載っているのだが、中田七段は右銀ではなく右金を繰り出してこの5五歩止めを指してきた(下図局面)。
イメージ 2

この指し回し自体も定跡書に載っていないわけではなく、自分もこういう手もある事は知っていた(上手の初手△5二金右を見た瞬間「それで来るか!」と思った)のだが、5三銀型と比べたらかなりマイナーな戦法なので、これを的確に咎められる下手はかなり珍しいと思う。実際自分も咎め方がわからず(そもそも二枚落ち定跡をほとんど知らない…)、単純に▲5五同角△5四金▲8八角△4五金…と進めて上手ペース(残念ながらこの先の棋譜はほとんど覚えていない)。
このままではいけない、と思った自分は中盤で銀を見捨てて上手陣にと金を作る、という苦肉の計(※3)を繰り出す。これが殊の外功を奏して難しい局面に持ち込めたようだが(局後の「上手銀得でも歩切れでと金の存在も嫌らしく思った以上に難しい」という中田七段の感想が印象深かった)、そもそも難しい局面での「腕力」でプロに敵うわけがない(笑)。最終的には1手違い(くらい)まで持ち込めたが及ばずこちらの負け。
詰将棋作家に二枚落ち定跡は必要ない!」
というのは単なる開き直り(笑)。

第2回の検定は10月13日(日)、今回は残念ながら受験できない。受験できるのならAコースに突撃(※4)しようと思っていたのだが…


※1…最高レート(の段位)は「その時はたまたま好調だった=その数字を以ってそのまま棋力と判断するのは正確でない」という可能性が高いので、直近20~30局のレートの平均値をもってその人の棋力を量るのが確度が高い、と自分は考えている。

※2…この1つ前の問題が「チャトランガ」を答えさせる問題だったので、実際に出題された問題では「将棋の原型といわれるゲーム」と書かれていた。

※3…「苦肉の策」とも言うが、元々は「苦し紛れの策」ではなく「自らの体を意図的に傷つけて行う策」という意味(三国志に詳しい方ならわかるかと)。今回の場合も助けようと思えば助けられた銀を意図的に見捨てての一手だった。もっともその時点でかなり苦しい(完封目前の)局面だったので「苦し紛れの策」という用法でも間違ってはいなかったのだけど(苦笑)。

※4…音ゲーでは「今の自分にはクリアできる確率は低い」と自覚した上で難しい曲に挑戦する、という意味で日常的に使われる言葉である。