…どうやっても詰まないって? そうですね、このままでは詰みません。この詰将棋は「リレー詰将棋?」の例題②(これを「リレー詰将棋第1番」とします)からリレーして解いてください。ただしその例題②もリレー元があるので注意。なお、その「リレー元」が今回のリレー詰将棋のスタート地点なので「リレー詰将棋第0番」とします。
こんな感じで今後も不定期で「リレー詰将棋」を掲載しよう、と考えている(問題の質は期待しないで下さい)。ただし、問題は必ずしも「書庫・将棋」で出題するとは限らないので、タイトルを見て自分には興味がない(なさそう)、という話であっても一応チェックする事をオススメします(今後はリレー元のリンクはつけません)。
最近プロ棋士の間では「最後の審判」という詰将棋が話題になっているらしい。伊奈川愛菓女流初段が「日本将棋連盟モバイル」のコラムでこの作品(1997年に発表された)の話を書いたことがきっかけのようである。
この作品は発表後から議論の対象となっている。その原因は「連続王手の千日手」と「打ち歩詰め」という2種類の禁じ手(の解釈)である。
1つ目の図は初手に角を打ったところ(詳細は割愛するが6七角と離して打つと詰まない)。
以下△4四玉▲3三銀引不成△5三玉▲4二銀引不成△5二玉▲7四角△6三角(※1)▲同角成△同玉▲8五角△6二玉▲5一銀不成△5三玉(△同玉は▲2二とと香を取りながらの開き王手で早詰)△▲4二銀上不成△4四玉▲4五玉△同玉▲6七角△5六歩の局面=下の図がこの作品の最重要局面である。
ちなみに△5六歩の中合をせずに△4四玉は▲3三銀上不成△3五玉▲2七桂△2六玉▲1六金△2七玉▲4九角と金を取って詰む(中合で角を6七から動かしておけばこの筋が消える)。また他の駒を中合しようとしても飛車と角しかないので、▲同角△4四玉▲4五飛(▲5三角)で早く詰む(桂合があればしのげるのだが売り切れ)。
さて、この△5六歩は逆王手になっている。こういう場合攻め方はこの王手を解除するように王手を続ける必要がある。…と言ってもこの局面では▲5六同角と取るよりない。この▲5六同角と取った局面が上の図と全く同一の局面(手数は21手目)になっている。
▲5六同角以下△4四玉▲3三銀引不成…(中略)…△5六歩▲同角で三度(みたび)上の図と同一局面(3回目、手数は41手)、さらに△4四玉▲3三銀引不成…△5六歩▲同角、と進むと四たび上の図の局面が出現、4回目の同一局面で千日手となる。
しかし、その間の攻め方の全ての手が王手だった(詰将棋なので仕方ない)ので、4回目(61手目)の▲5六(同)角という手は「連続王手の千日手を成立させてしまう」、つまり3回目の下の図(60手目)で▲5六同角と取る手は禁じ手(反則負け)になる。
そこで、(3回目の)下の図で▲5六同角以外の指し手を探してみると… ない。仮にこれが指し将棋(王手以外の手を指してもいい)だったとしても▲5六同角以外に王手を解除する手がない。…つまり3回目の下の図(60手目)の局面は「詰み」、という事になる。
…だが、3回目の下の図の局面は「歩を打って相手玉を詰ました」、つまり「打ち歩詰め」となるので3回目の下の図の1手前の▲6七角に対し△5六歩と打つ手は禁じ手(反則負け)になる。
そこで、3回目の▲6七角(下の図から△5六歩を除いた局面)には△5六歩以外の応手で応じないといけない、というのがこの作品の意図。その結果△4四玉▲3三銀上不成以下、前述した手順で69手詰めとなる。
…この作品が議論の対象になるのは上記解説のうち地の色が濃い部分。
簡単に書くと「打ち歩の王手を禁じ手(この作品の場合連続王手の千日手)を使わずに解除できない局面は詰み(打ち歩詰め)と解釈していいのか否か」(この議論に「結論」が出た、という話は自分は聞いた事がない)。
…でもこれって下の図と同じ事(▲5二歩を△同金と取るのは1一飛で玉を素抜かれる=自殺王手の反則=禁じ手)のような気もするのだがどうなのだろう。
…自分ごときではよくわからないのでこれ以上は触れない事にする。
1・総手数が偶数?
詰将棋というのは攻め方の王手で始まり、玉方の応手と交互に繰り返し、最後に攻め方の王手で詰みとなるので、総手数は必ず奇数になる(※2)。ところが…
この作品は(王手をかけられている)玉方が初手を指し、続いて攻め方が王手をするので、総手数が偶数になる。初形で「百」という形を表現する為の止むを得ない(?)手段、という事らしいが(6四にスペースがあると▲6四角成の1手詰めになってしまう)。
2・駒が…?
次の作品はパッと見ただけではどこがどうグレーなのか分からないかも知れない。そういう方は盤にこの図を並べてみていただきたい。
…この詰将棋の作者は「羽生善治氏」である。同姓同名ではない。現役のプロ棋士羽生善治三冠が小学3年生の時に作った作品である(羽生三冠が少年時代通った「八王子将棋クラブ」には今もこの作品を書いた紙が飾ってあるとか)。
…この作品で「飛車が3枚でないといけない理由」が自分にはわからない。それどころか攻め方の持駒に飛車があることで初手▲5一飛以下の余詰があるような気もする(作意手順は▲4一金△同玉▲5三桂以下)のだが…
飛車(龍)が全部で47枚もある(これを盤面で再現しようとすると駒が24セット!必要になる)。ちなみにこの作品の「ばか自殺ステイルメイト」とは双方協力して攻め方がステイルメイト(合法手がない状態、具体的には攻め方の龍が全て盤上から消える)になったら正解。…って、この作品も総手数が偶数ではありませんか(笑)。
…こういった遊び心(?)がわかってくるとより深く詰将棋の世界を楽しめるのかも知れないが、通常の作品を作るのにも四苦八苦している自分がその境地に達せる日は来るのだろうか…(苦笑)。
(※1)…△6三飛の合駒は▲同角成△同玉▲7三飛△6四玉▲7四金まで、歩は二歩なので打てず、他の駒は品切れ(盤上に全て使われていて玉方の持駒にない)。また△6二玉と逃げるのは▲7三金△同玉▲8三角成△6二玉▲6五香、この時合駒に高い駒(飛車・角・金)しかないため、どれを打っても取って打って早く詰む。
(※2)…チェスは「白の手+黒の手」で1手とカウントするので、奇数手のプロブレム・偶数手のプロブレムともに普通に存在する。また、フェアリー詰将棋の「自殺詰」は玉方の玉に王手をかけつつこちらの玉が(逆王手で)詰まされるのが目的なので総手数が偶数になる。